人手不足や高齢化、10年以内の大量離職など建設業界では様々な問題があります。しかし『労働基準法改正』の改正により、建設業界の働き方が大きく変わるかもしれません。
今回はそんな『労働基準法改正』についてご紹介していきます。正しい知識を身に付けて、2024年に備えましょう!
目次
1.時間外労働の残業規制とは
2.建設業の残業規制改正で何が変わるのか
3.建設業の残業規制へ対応するための2つのポイント
4.建設業において残業規制以外にも注意すべき変更点
5.残業規制についてQ&A
6.まとめ
1.時間外労働の残業規制とは

時間外労働の残業規制が行われる背景には、女性のキャリア形成、少子化対策、仕事と家庭の両立などがあります。日本が直面している少子高齢化に対する対策として『働き方改革』がありますが、その一環として労働基準法が改正され時間外労働の残業規制が規定されました。
①労働時間の大原則
先ずは、法定労働時間について現行ルールをご紹介します。
・1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない
・6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけない
・毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけない
※参考元:厚生労働省HP
②「36協定」で定める時間外労働の上限
ただし、上記の法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や、休日労働をさせる場合には次の手続きが必要です。
・所轄労働基準監督署⻑への届出
※参考元:厚生労働省HP
多くの企業に時間外労働や休日労働があるのは、事前に上記手続きを行っているからです。
繁忙期など、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を⾏わなければならない場合には、2019年までは『特別条項付きの36協定』を締結すれば、実質上限なし(年6ヵ月まで)で時間外労働を⾏わせることが可能でした。
しかし、2019年4月の労働基準法改正で、臨時的な特別の事情があった場合(特別条項)でも残業時間の上限が定められました。
既に大企業では2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されていますが、時間外労働や休日労働が恒常化している建設業に関しては、新ルールの適用まで5年の猶予が設けられています。
2.建設業の残業規制改正で何が変わるのか

猶予といっても残り僅かとなりました。建設業でも2024年4月から労働基準法改正が適用されます。法適用により、何が変わるのでしょうか?
改訂前と改訂後について表で紹介していきます。
①2024年4月から建設業にも残業規制が適用
改定前 | 改定後 | |
---|---|---|
規制内容 |
特別条項付き36協定締結により、以下のルールが適用。
・1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させることができる。ただし、原則として時間外労働の上限は月45時間・年360時間。 ・毎週1日の休日または4週間を通じて4日以上の休日に労働させることができる。 ・時間外労働が⽉45時間を超えることができる月は、年6回が限度。ただし、上限時間は実質なし。 |
特別条項付き36協定締結により、建設業でも以下ルールが適用。
・時間外労働が年720時間以内。 ・時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満。 ・時間外労働と休⽇労働の合計について、2~6カ月の平均が全て80時間以内。 ・時間外労働が⽉45時間を超えることができる月は、年6回が限度。 |
罰則 | なし。 | 6ヶ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科されるおそれがある。 |

②改正後は罰則付きの規制に?
改訂前の時間外労働の上限は、厚生労働大臣の告示により定められたものであるため、強制力はありませんでした。しかし、法改正により改正労働基準法に具体的な数字の上限が明記されたため、罰則付きの規制になったのです。
※ただし災害からの復旧・復興の事業に関しては、月100時間未満、2~6カ月平均80時間内の2つの規制は、2024年4月以降でも適用されません。
3.建設業の残業規制へ対応するための2つのポイント
次に残業規制に対応するための課題と対策について2つ紹介していきます。
①勤怠情報の正確な把握
建設業では、従業員が打刻したデータや出勤簿を元に人件費や工数管理などを計算していきます。しかし、毎月の出勤簿の提出日にまとめて記入を行い提出する人も少なくなく、記入ミスが発生することもあります。
作業現場で作成した日報を勤怠管理として残す場合もありますが、データの改ざんや虚偽申告なども可能なため客観性も信頼性も乏しいのが現状です。
厚生労働省が出している『労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』によると、解決策としてタイムカードやICカードの活用が挙げられています。
②施工管理アプリの活用
建設業における長時間労働の背景には、高齢化や人手不足が要因としてあります。そこで、業務の効率化を行うために施工写真や図面の管理、工程表などの施工管理業務の効率化が行える『施工管理アプリ』を導入する企業が増えています。
近年、建設業で目にするようになった『建設DX』などは、”ITツールを導入して環境に合わせて働き方を変えていく”という取り組みですが、施工管理アプリもITツールの一つです。
低価格で始めることが可能で、導入した施工会社の中には『メールの利用が8割減少』という方もいるため、これから業務の効率化を目指す方にはオススメのツールです。
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>>施工管理アプリとは?についてはコチラの記事もオススメです。
4.建設業において残業規制以外にも注意すべき変更点

ここまで労働基準法改正による残業規制について紹介してきましたが、実は残業規制以外にも注意すべき変更点があります。次は注意すべき3つの変更点を紹介していきます。
①週休2日制の促進
国土交通省では、建設業の働き方改革を推進する観点から直轄工事において、週休2日を確保できるよう、適正な工期設定や経費補正を実施しています。
2024年4月の時間外労働規制の適用に先駆け、2023年度には原則全ての直轄工事で週休2日に取り組む方針を明らかにしました。
②法定割増賃金率の引き上げ
2023年4月1日からの適用になりますが、割増賃金率の引き上げが行われます。
2023年3月まで 月60時間以下 |
2023年3月まで 月60時間超 |
2023年4月から 月60時間以下 |
2023年4月から 月60時間超 |
|
---|---|---|---|---|
大企業 | 25% | 50% | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 25% | 25% | 50% |
割増賃金となるのは時間外労働のみで、休日労働と深夜労働の割増賃金率には変更ありません。
月60時間までの時間外労働であれば今までと変わりませんが、超えてしまうと人件費が上がるため注意が必要です。
③正規雇用者・非正規雇用者の同一労働同一賃金
2020年4月に大企業、2021年4月に中小企業で適用されている『同一労働同一賃金』は建設業でも適用されています。
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者や非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)といった雇用形態に関係なく、同じ仕事内容に対して同一の賃金を支払うという考え方です。
人件費が上がるのは勿論、手当なども雇用形態に関係なく支払う必要が出てくるため、見直しが必要になります。
5.残業規制についてQ&A
最後に時間外労働の規制について、よくある質問を紹介していきます。
Q.現場への移動時間は労働時間に含まれるか?
パターン①:直行直帰の場合
直行直帰の場合は、現場への移動時間は労働時間とみなさず通勤時間になります。
パターン②:上司の指示で一度会社で集合し、車を乗り換えて現場へ行く場合
会社からの指示があるため、会社から現場までの移動時間も労働時間として捉えられます。
Q.週休2日を破ったときの罰則はあるのか?
週休2日制は法律ではないため、罰則はありませんが、国土交通省は原則全ての直轄工事で週休2日に取り組む方針です。
6.まとめ
今回は、2024年4月から建設業でも適用される時間外労働の残業規制について紹介してきました。
残業規制の適用は、業務効率化を考えるキッカケとなり建設業全体の生産性の向上が期待できます。また、働きやすい環境は人手不足の解消にも繋がります。
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6年4ヶ月間の社会保険労務士事務所勤務、3年間の民間企業経営幹部を経て、平成3年4月に社労士・行政書士事務所開業。行政書士・社会保険労務士・特定社会保険労務士付記を保有しており、中小企業庁委託事業として中小企業等をサポートしています。