現場DXとは、最新のデジタル技術を使って建設業や製造業の現場作業を刷新し、新しい価値を生み出すことです。現場DXが実現すると、人手不足の解消や作業効率化など多くのメリットがあります。

しかし、「現場DXに取り組みたいけれど、どのように進めるべきかわからない」と悩む企業担当者も少なくないでしょう。

本記事では、現場DXの意味や推進するメリット、建設や製造現場で活用できるDXソリューション、進め方や成功させるためのポイントを紹介します。現場DXの取組を検討する際は、ぜひ参考にしてください。

1.現場DXとは

現場DXとは、最新のICT(情報通信技術)を活用しながら、建設業や製造業などの現場作業を刷新して変革を起こすことです。

そもそもDXの定義について、総務省の資料では以下のように紹介されています。

DX:Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。

引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省

さらにDXに似た概念として、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。

Digitization(デジタイゼーション)
既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式にすること

引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省


Digitalization(デジタライゼーション)
組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること

引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省

①DX実現に向けた3段階

DXを推進するには、3段階で取り組むことが大切です。
まずは「デジタイゼーション」の段階で、デジタルツールを導入して業務のデジタル化に取り組みます。次の「デジタライゼーション」の段階では業務フロー全体のデジタル化を目指し、最終段階でビジネスモデル全体を一新してDXを実現し、変革を起こします。
建設現場では、国土交通省が提唱するi-Construction(アイ・コンストラクション)が進められています。i-Constructionとは、ICTの全面的な活用で、建設システム全体の生産性向上を図ることです。実際、測量や検査業務にさまざまな最先端技術が利用されています。
i-Constructionによるシステム化は「デジタライゼーション」の一環と考えられ、今後は建設現場に変革を起こすDXへのステップアップが求められています。

②産業別の取組状況

引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省

2021年、総務省が発表した「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」によると、建設業や製造業など現場DXの取組状況は20%以上〜30%未満で、8割近くが「実施していない」状況であることがわかりました。

30%以上の取組が進んでいる情報通信業や金融業などに比べると、低い結果となっています。

この調査結果から、産業別で考えると現場DXは比較的遅れているといえるでしょう。

引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省

2.建設や製造現場でDXを推進するメリット

建設や製造現場におけるDXは遅れている状況ですが、現場DXに取り組むとさまざまなメリットがあります。ここでは4つのメリットを紹介します。

①人手不足の解消

現場DXを推進すると、人手不足の解消につながります。

建設業界などの現場では人手不足が懸念されており、少子高齢化により悪化すると予測されています。そこで現場DXに取り組んで、これまでよりも少ない人数や労力をかけて同じ工期内で作業が完了すれば、生産性向上につながり人手不足を解消できます。

具体的な施策の例は、次のとおりです。

● デジタル化による効率的な工期管理
● ロボットを使用した作業の自動化
● 施工管理アプリを活用して遠隔からの現場管理

またDXが現場で進むと、「建設や製造現場は肉体的に辛い」というネガティブなイメージを払拭でき、採用活動で若手人材へ向けて効果的にアピールできるでしょう。

②現場作業の効率化

アナログ作業をデジタル化してDXに向けて進めることで、現場作業の効率化につながります。たとえば以下のような方法で、アナログ作業をデジタル化できます。

● ツールを使って変更した図面データを現場の作業員にリアルタイムで共有
● チャットやグループウェアを活用して情報共有を促進し、作業精度を向上
● タスク管理ツールを使って、作業員の業務を可視化して一元管理

情報共有を迅速化することで無駄な作業が削減され、業務効率化を実現できるでしょう。

③ノウハウの蓄積と継承

現場DXを進める中で、ツールを活用して過去のデータを蓄積していくと、ベテラン作業員による貴重なノウハウを若手に継承できます。

デジタル技術の活用で特定の作業員しか対応できない業務が減り、属人化を避けられるでしょう。

④安全性の確保

建設や製造現場でDXを進めると、作業員の安全性を確保できます。ロボットに危険な作業を任せたり、ドローンの空撮技術を使って危険地帯を確認できたりすれば、作業員のリスクが軽減するからです。

さらに、デジタル技術を活用して作業トレーニングを実施すると、現場で起こりやすい事故を予測できるでしょう。


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3.建設や製造現場におけるDXソリューション

次に、建設や製造現場における5つのDXソリューションを紹介します。

①施工管理アプリ

施工管理アプリとは、建設や土木現場で使用する施工写真や図面、工程表などを一元管理できるアプリのことです。
施工管理アプリを活用すると、図面や写真、資料を印刷して持ち運ぶ必要がなくなり、業務効率化につながります。またアプリから報告書を作成して提出すれば、現場から会社へ戻らなくて済むので、労働時間の短縮につながる点もメリットです。
施工管理アプリのチャット機能を使えば、社内外の関係者全員に情報を一斉送信でき、協力会社との連携強化につながるでしょう。

施工管理アプリに関して、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。


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②複合現実(MR)

複合現実(MR:Mixed Reality)とは、現実と仮想世界を融合させる技術のことです。MRと近しい言葉として、VRやARがあります。それぞれの意味をまとめると、次のとおりです。

● 仮想現実(VR:Virtual Reality)…仮想世界に入り込んで体験ができる技術
● 拡張現実(AR:Augmented Reality)…現実世界にデジタルコンテンツを融合する技術

VRとARを組み合わせた新しい技術がMRで、建設現場において利用され始めています。具体的には、MRを使って施工手順を現場に投影し、危険箇所を可視化して安全な施工計画の策定に利用されています。

③ドローン

小型の無人航空機であるドローンにカメラを設置して、建設現場を空撮できます。高層ビルやダムにおける工事の進捗状況を把握できるだけでなく、建設予定地の地形予測にも利用可能です。

老朽化しているビルやインフラ設備など、人が入りにくい危険地帯をドローンが撮影することで、作業員の安全を守れます。目視確認が難しい場所にドローンを活用すれば、安全性を確保しながら点検作業の効率化が実現するでしょう。

④AI

人工知能(AI:Artificial Intelligence)を工場で用いることで、製造現場のDXを促進できます。たとえば産業用ロボットにAIを組み込んで手順を学習させたり、工場の在庫管理をAIが計算して最適化したりできます。

AIを活用すると業務の効率化や自動化が実現し、人手不足の解消につながるでしょう。

⑤ICT建機

ICT建機とは、情報通信技術であるICTを活用した重機のことです。設計データと実際の作業位置を測定して差分を自動計算する技術や、自動コントロールする技術などがICT建機に搭載されています。

ICT建機の活用で、無駄な動きが減って作業精度が向上します。重機をコントロールしやすくなり、イメージ通りの工事を進めやすくなる点もメリットです。

4.現場DXの進め方

現場DXはどのように推進すればいいのでしょうか。ここでは4つのステップを紹介します。

①現場の課題を把握

まずは現場の課題やニーズを把握しましょう。現場の作業員に直接ヒアリングして、改善点をリストアップします。課題を明確にすることで、導入すべきツールを選定しやすくなります。

②DX推進体制を整備

次に、DX推進体制を社内に設置しましょう。専門チームや部署を設け、責任者を明確にします。そのうえで現場DXの推進戦略を策定し、予算や人員を確保することが重要です。必要に応じて、外部コンサルタントへの依頼も検討すると良いでしょう。

③ツールの選定・導入

現場の課題解消につながるツールを選定して導入しましょう。作業員のリテラシーに合ったツールを選ぶことが重要です。たとえば工場なら、まずは現場を可視化するツールを導入し、そこから最適化や自動化システムへと発展させてDXを推進していきましょう。

④運用方法を共有

現場の作業員にツールの運用方法やDXの目的、メリットを共有しましょう。ツールの使い方に関する研修を実施し、作業員が使いこなせるようサポートします。一定期間後、運用に課題がないか作業員にヒアリングし、改善を続けることが大切です。

5. 現場DXを成功させるために

続いて、現場DXを成功させるために重要な2つのポイントを紹介します。

①経営戦略とDX戦略を一致させる

現場DXを推進するには、経営戦略と一致したDX戦略を策定することが大切です。DXの推進にあたり、企業はICTを活用して経営課題を解決しながら、新たな価値を生み出す必要があるからです。
経営ビジョンを明確にして、DX戦略の策定でどのように実現するか考えることで、新たなビジネスチャンスを生み出し、変革を起こせるようになります。

②現場を巻き込むために経営層が積極的に実行する

DX戦略を実行するには、経営層が積極的に働きかけて現場を巻き込む必要があります。そのためにまずは経営層が現場DXを理解して、全社横断で取り組むことが重要です。
DXを推進する際、現場からの反対や抵抗が起こるかもしれません。さまざまな関係者から合意を得る必要があるため、経営層がしっかりとコミットメントしてDXを実現しましょう。

6. 【事例】建設現場のDXは情報共有のデジタル化から

建設現場のDXは、情報共有するためのツールを導入して、データを可視化することから始まります。

建設業のDX推進を支援する「現場クラウドConne」なら、画像を使って現場の最新情報や工事データ、スケジュールを可視化できます。直感的に操作できるため、新しいツールに苦手意識のある作業員も簡単に利用可能です。

ここでは現場クラウドConneを活用して、デジタル化やDXの推進に取り組んでいる事例を紹介します。

①素早い情報共有で協力会社と連携強化|株式会社本山建設

株式会社本山建設では、現場の進捗状況を把握するための工程会議が担当者の負担になっていました。そこで情報共有を効率化し、現場に集中する時間を増やすために現場クラウドConneを導入。
現場クラウドConneを活用して定期的に進捗報告を行い、協力会社と図面や工程表を共有したところ、会議の頻度が減り、現場作業に集中できる環境を実現できたといいます。


>>株式会社本山建設の事例はこちらから

②メール利用を8割削減|株式会社マリン工業

株式会社マリン工業では、メールを使って関係者に図面などの資料を送付していましたが、手間と時間がかかっていました。
そこで現場クラウドConneを導入して協力会社や元請け会社ごとにスペースを作成し、ドライブでのデータ共有に取り組んだところ、メール利用が8割も軽減したといいます。効率的に情報を管理できるようになり、スマートフォンからもアクセスできるため紙の図面を持ち歩く必要がなくなりました。


>>株式会社マリン工業の事例はこちらから

7.まとめ

現場DXの実現に向けて新しいデジタル技術を積極的に取り入れることで、業務効率化や人手不足の解消につながります。解決したい現場の課題を特定し、経営戦略と一致するDX戦略を策定すると、建設や製造現場におけるDXを加速できるでしょう。
弊社が提供する「現場クラウドConne」は、建設業に特化したデジタルツールです。現場の情報を可視化でき、社内外コミュニケーションを円滑化しながら情報共有を促進できる点が特徴です。導入時のサポートはもちろん、運用方法の提案もしているためデジタルツールを初めて導入する場合でも、安心してご利用いただけます。
建設現場のDXに向けて、現場クラウドConneをぜひご活用ください。


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