安否確認メールとは、災害発生時に従業員やその家族の安否を迅速に把握するために送信するメールのことです。本記事では、安否確認メール送信時に押さえておくべき重要なポイントや、建設業ですぐに利用できる例文を紹介します。

加えて、安否確認メール送信にまつわる課題と、解決するための安否確認アプリの活用方法を、建設関連会社の責任者や現場監督に向けて詳しく解説します。

1.安否確認メールとは

安否確認メールとは、地震や台風、洪水などの災害発生時に、従業員やその家族の状況を把握するために送信するメールのこと。従業員とその家族が無事かどうか、出勤は可能かどうかを確認することが目的です。
また従業員だけでなく、取引先や協力会社などに送る場合もあります。

緊急時に電話を使うと回線が混み合うことがあるため、比較的連絡が取りやすいメールで安否確認を行う企業が多く見られます。

2023年に東京商工会議所が会員企業向けに実施したアンケート調査によると、従業員の安否確認手段は「メールやSNS」が最多の56.2%でした。この結果からも、メールも広く使われていることがうかがえます。

出典:会員企業の災害・リスク対策 に関するアンケート 2023年調査結果|東京商工会議所

①送信方法

安否確認メールの主な送信方法として、以下の2つが挙げられます。

● 直接送信する
● メーリングリストを活用して送信する

直接送信とは、従業員のメールアドレスを1件ずつ宛先に設定して送信する方法のこと。しかし以下のようなヒューマンエラーにより、個人情報の漏えいリスクを引き起こしやすいといえます。

● 間違った宛先に送ってしまった
● 宛先設定の際、BCCではなくTO欄やCC欄にすべてのメールアドレスを入力してしまい、従業員のメールアドレスが受信者に見られてしまう

一方、メーリングリストは、複数人のメールアドレスをあらかじめリスト化しておく手法です。送信時には1件のメールアドレスを設定するだけで、関係者に連絡が行き渡ります。たとえば「安否確認メール用のリスト」を事前に作成しておき、いざという時はそのメーリングリスト宛に送信すれば、リストに含まれたメンバー全員に確認のメールが届きます。

2.建設業におけるBCP対策と安否確認メール

災害発生時、建設業では自社の事業継続だけでなく、災害復興のためにも稼働する必要があります。
このような事態に向けた対策を「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」といい、建設業に関連する企業は突発的な災害や事故の発生に備えてあらかじめ、復興活動も視野に入れた計画を策定しておくことが求められます。

従業員の安否確認は、BCPの初動対応のひとつです。災害時に企業は、従業員の安否確認を最優先で行わなければなりません。
とくに建設業は現場に関わる企業数や人数が多く、正社員だけでなく派遣社員やアルバイトまで含めると、多くの関係者に安否を確認する必要があります。

安否確認の際に電話を使用すると、通話が途切れるリスクが想定されるので、電話よりもメールなどの利用が推奨されます。

3.安否確認メールを送る際のポイント

ここからは、安否確認メールを送る際に押さえておくべきポイントを解説します。

①メールの内容は安否確認に絞る

メールで伝える用件は安否確認に絞り、ほかの用件は記載しないようにしましょう。
また、メールの件名から一目で「安否確認の内容だ」とわかるように工夫することもポイントです。

②簡潔な文章を心がける

メールの文面は、できる限り簡潔な文章を心がけましょう。冒頭の時候の挨拶などは不要です。
メールが長すぎると途中で読むのを止めてしまい、返信しないケースも考えられるので、とにかく「短くシンプルに」を心がけてください。

ただし取引先へ送る場合には、簡潔でありながら、相手に対する気遣いを感じられる文面にすることが大切です。

③災害発生後、迅速に送る

災害発生後、なるべく時間を空けずにメールを送ることが大切です。いざという時になってゼロから文面を考えていては時間が過ぎていくばかりです。日頃からテンプレートをあらかじめ用意しておきましょう。

また従業員に対して定期的に訓練を実施して、安否確認メールを受け取った際にはすぐに返信する必要があることを周知しておくと良いでしょう。


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4.建設業で使える安否確認メールの例文

安否確認メールの本文は、以下の要点を押さえて作成しましょう。

● 本人と家族の状況
● 現在の居場所
● 出社の可否
● 交通手段

また端的に返信してもらえるように、文面を工夫する必要があります。ここでは、テンプレートとしてすぐに活用できる送信・返信メールの例文を紹介します。

①社内向け安否確認メールの例文

直接送信や、メーリングリストで送る社内向け安否確認メールの例文です。

件名:【緊急】安全確認のお願い

本文:

<企業名><担当部署><担当者名>

先ほど、震度◯の地震が発生しました。
何よりもまずは、ご自身とご家族の安全を確保していただくことをお願いします。 安全が確認できましたら、以下の項目にご回答いただけますようお願いいたします。

1)ご本人の安全状況:◯無事 ◯軽傷 ◯その他( )
2)ご家族の安全状況:◯全員無事 ◯一部負傷者あり ◯連絡取れず
3)現在の居場所:◯自宅 ◯職場 ◯外出先
4)出勤可能性:◯可能 ◯困難
5)ご自宅の状態:◯無事 ◯被害あり ◯状況不明
6)現時点で利用可能な交通手段:◯徒歩 ◯車 ◯公共交通機関 ◯自転車 ◯その他( ) 安全が第一です。無理をせず、まずはご自身の安全を優先してください。
皆様の安全確認が取れ次第、さらなる情報を共有します。

<企業名>
<担当部署>
<担当者名>
<連絡先>

以下は、安否確認用のURL(回答フォームなど)に誘導したい場合の例文です。

件名:【緊急】安全確認のお願い

本文:

<企業名><担当部署><担当者名>

本日、震度◯の地震が発生しました。まずはご自身とご家族の安全を優先して行動してください。
安全の確保後、下記リンクにアクセスし、必要情報の入力をお願いいたします。

<URL>

安全が第一です。無理をせず、まずはご自身の安全を優先してください。
皆様の安全確認が取れ次第、さらなる情報を共有します。

<企業名>
<担当部署>
<担当者名>
<連絡先>

②現場監督向け安否確認メールの例文

次に、現場監督向けの安否確認メールの例文を見てみましょう。

二次災害を防止するために、施工中の現場の被害状況を確認することが大切です。被害者がいない場合でも、火災、燃料流出、余震で建物の敷地外への倒壊などが起こらないかどうかを確認する必要があるからです。

件名:【緊急】現場の安全確認と被害状況報告のお願い

本文:

<企業名><担当部署>より全現場監督へ

本日、震度◯の地震が発生しました。まずはご自身とご家族の安全を最優先にしてください。
安全確保後、あなたが担当する建設現場の安全確認と被害状況の報告をお願いします。

以下の点にとくに注意して、現場の状況を確認し報告してください:

● 現場内外の構造物の倒壊や亀裂の有無
● 火災発生の有無
● 燃料流出などの危険物漏えいの有無
● 余震発生による二次災害のリスク
● 緊急対応の必要性や、安全確保のための緊急措置
● その他、特筆すべき安全上の懸念事項

報告は以下の方法でお願いします:
<報告方法(例:URL、返信先メールアドレスなど)>

この情報は、迅速かつ適切な対応を行うために極めて重要です。
十分な注意を払いながら、ご協力をお願いいたします。

<企業名>
<担当部署>
<連絡先>

③取引先向け安否確認メールの例文

次に、取引先向けの安否確認メールの例文を示します。

ポイントは、先方の身の安全を気遣うだけではなく、自社の状況も伝えることです。取引先に自社の被害状況や安否を共有しなければ、取引が滞ってしまったり、中止されたりする恐れもあるからです。/p>

件名:震災に際してのお見舞い

本文:

<相手企業名><担当者名>様

<自社企業名>の<あなたの名前または部署名>です。
先日発生した地震により、貴社が所在する地域に大きな影響があったことをうかがい、心からお見舞い申し上げます。<担当者名>様を含む、貴社の皆様のご無事を心よりお祈りしております。

<業務やミーティング>が予定されておりますが、現状の回復に全力を尽くしていただくことが最優先です。

弊社は、<「無事」「稼働に影響はない」など、状況を端的に伝える>です。

日程や納品に関するご相談は、貴社の準備が整いましたらご連絡ください。
また、この困難な時期に何かお手伝いできることがあれば、遠慮なくお知らせください。支援や協力のために可能な限り対応いたします。

この度の災害による被害から一刻も早く回復し、平穏な日常が戻ることを願っております。

<署名>

<連絡先>

④取引先からの安否確認メールに返信する際の例文

次に、取引先から安否確認メールが送られてきた場合の返信例を見てみましょう。

自社の無事や稼働状況を伝え、今後も取引を継続するために速やかに返信する必要があります。

件名:震災に関するお見舞いへのお礼

本文:

<相手企業名><担当者名>様

<自社企業名>の<あなたの名前または部署名>です。
この度は、震災に際して心温まるお見舞いの言葉をいただき、深く感謝申し上げます。
お忙しい中、ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません。

弊社では、幸いにも従業員や施設に重大な被害はありませんでした。
一時的な停電や通信障害は解消し、通常の業務は順次再開しております。 ただ、一部の設備がまだ完全な復旧には至っておらず、通常の生産活動に影響が出ています。
現在、復旧作業に全力を注いでおり、納期やサービスにつきましては、◯月◯日頃の再開を目指しております。

一日も早く通常の業務体制に戻れるよう努めて参ります。

今後とも変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

<署名>

<連絡先>

5.安否確認メールの課題

メールによる安否確認には、いくつかの課題があります。ここでは4つの課題を見てみましょう。

①手作業のため遅延やミスが生じやすい

大勢の従業員に対して手作業で安否確認メールを送信している場合、時間がかかってしまい、確認に遅れが生じます。また宛先の入力間違いなど誤送信が起こりやすいので、注意が必要です。

②集計作業に手間がかかる

メール送信だけでなく、返信内容の集計にも手間がかかります。
寄せられた回答を手動で確認・集計するのは非効率な作業となり、管理者に負担が生じます。

③メールは埋もれる可能性が高い

メールで送信すると、ほかの業務メールにまぎれて埋もれてしまう可能性もあるでしょう。またパソコンでしかメールを確認できない場合、外出時や在宅時には、すぐに返信してもらえません。
加えて、メールはチャットなどと比べて文案を考え、整えてから返信するという一連の作業は時間がかかり、後回しにされるケースも想定されます。

④メールが届いたか、読んでもらえたかがすぐにわからない

安否確認にメールを使用している場合、メールが相手に届いたかどうかがわからない点も課題のひとつです。
プライベートで使われているSNSのようにのように「既読」が表示されるような仕組みがあれば、少なくとも受信者の目に入ったかどうかは確認できるでしょう。ところがメールの場合、到達後の既読状況は、返信がない限り送信者側では判断ができません。


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6. 安否確認アプリの導入もひとつの方法

安否確認メールにまつわるさまざまな課題を解決する方法のひとつとして、安否確認アプリの導入が挙げられます。

安否確認アプリとは、災害時にスマートフォンで従業員や家族などが無事かどうかを把握するためのツールを指します。建設業では、安否確認に「施工管理アプリ」が利用されることもあります。ここでは、安否確認アプリの特徴を見てみましょう。

①一斉配信ができる

一斉配信の機能が搭載されているので、メールのように個別に送信する必要がなく、迅速な確認が可能です。安否確認アプリの中には、既読マークが表示される製品もあります。 またアプリなら各自のスマートフォンにプッシュ通知が来るので、受信者の目に留まりやすいといえるでしょう。

②安否状況を一画面で管理できる

安否確認アプリ内で、アンケートを実施できる場合があります。回答結果が自動で一覧表示されるため、集計作業が効率化され人的ミスを大幅に低減できます。

③チャットやドライブなどほかのBCP対策機能も利用できる

安否確認アプリによっては、チャットやファイル共有機能などを利用できる製品もあります。これらはBCP対策として有効な機能です。

緊急時において速やかに業務を再開するポイントは、以下のとおりです。

● 効率良くコミュニケーションを取れるツールがあること
● 日頃からデータを安全に保管・バックアップしておくこと

たとえばチャット機能が搭載された安否確認アプリを導入しておけば、緊急時に関係者とのやり取りが可能になります。現場の状況をテキスト、写真、動画でリアルタイムに共有でき、復旧作業や業務再開を効率的に進められるでしょう。

またデータをクラウド上に保管し、バックアップが取れるアプリを利用すれば、災害で社内のサーバーやパソコンが破損しても、重要なデータに再びアクセスできます。

BCP対策となる機能をあらかじめ準備しておけば、関係者とのコミュニケーションを保ちながら事業継続が可能になります。
建設現場では、BCP対策として「施工管理アプリ」を使用することも可能です。施工管理アプリの詳細は、以下の記事をご覧ください。

7. 建設業の安否確認アプリならConne

「現場クラウドConne」は、安否確認にも活用できるコミュニケーションツールです。
ここではConneの機能や特徴を紹介します。

①従業員だけでなく取引先や協力会社も招待可能

従業員はもちろん、取引先や協力会社もツール利用に招待できます。緊急時に安否確認メッセージの一斉連絡や既読確認ができるので、情報共有が迅速化されます。

②パソコンだけでなくスマホからも利用できる

スマートフォンアプリで利用できるので、わざわざパソコンを開いて確認する必要がありません。自宅や出先からでも簡単に安否確認の連絡に対応できます。

③ドライブに重要なデータを保管・共有できる

Conneではドライブ機能も利用できます。BCP関連の資料や、重要なデータを日頃からドライブにまとめて保管しておくことが可能です。万が一事務所が被災した場合でも重要なデータやファイルにアクセスでき、復旧や業務再開をスムーズに進められます。

8. まとめ

本記事では、災害発生時における安否確認の重要性や、連絡時に押さえるべきポイントを詳しく解説しました。

建設業では従業員の安全確保や事業継続のみならず、災害復旧に携わる必要があります。事前に十分なBCP対策を講じておくことで、事業継続と復旧活動を迅速に行えるでしょう。

建設業のBCP対策における重要なポイントは、以下の3点です。

● 非常時の迅速な安否確認
● 効率的なコミュニケーション
● 円滑に事業継続ができるデータのバックアップ

このような環境構築を実現する、建設業向け業務効率化ツールの導入もぜひ検討してみましょう。


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