工事現場の黒板には、現場に関する情報共有を迅速化する役割があります。現場の様子と黒板を含めて写真に撮って記録することで、「いつ」「どのような工事が行われたのか」といった情報を、関係者間でわかりやすく共有できるようになります。
工事黒板はデジタルカメラで撮影するだけでなく、最近ではスマートフォンやタブレット、専用のアプリで撮影し、情報共有の効率化を図るケースも増えています。
本記事では、工事黒板の書き方のポイントを解説するとともに、撮影・管理におすすめのアプリをご紹介します。
目次
1.工事写真における黒板の目的
2.工事黒板の書き方と注意するポイント
3.工事黒板の写真を効率的に撮影・管理するアプリの種類
4.工事黒板の写真管理に「施工管理アプリ」を利用するメリット
5.【無料版も】工事用電子黒板アプリ5選
6.工事黒板の写真撮影・管理アプリの選び方
7.工事黒板の画像管理にも使える施工管理アプリConne
8.まとめ
1. 工事写真における黒板の目的
工事写真における黒板には、以下の項目を明記して現場の様子とともに撮影することで、進捗状況を伝える役割があります。
●工事名
●日付
●工種
●目的
●施工社名 など
工事現場の写真だけでは「いつ」「どのような工事が行われたか」などの情報を伝えることができません。そこで黒板で情報を補って写真に残すことで、工事の詳細情報を関係者とスムーズに共有できるようになります。
つまり工事写真における黒板は、情報共有の迅速化の観点で重要な役割を担っているといえます。
これまでは工事用黒板に必要事項を記入し、デジタルカメラで撮影している会社が多かったのではないでしょうか。しかし近年ではスマートフォンやタブレット、あるいは専用のアプリを使って撮影するケースも増えてきています。
2.工事黒板の書き方と注意するポイント
工事黒板の書き方のポイントをお伝えします。以下の4点を押さえると良いでしょう。
①5W1Hを明確に記入する
黒板には、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を明確に記入することが大切です。以下の表で、5W1Hの例を見てみましょう。
5W1H | 内容 | 例 |
---|---|---|
When(いつ) | ・撮影日時 ・施工前後の時期 |
・2024年4月1日 |
Where(どこで) | ・場所、部位 ・側点 |
・県道◯号 |
Who(誰が) | ・立会監査人 ・撮影者 |
・◯◯建設 |
What(何を) | ・工種 ・工事名 |
・鉄筋工 |
Why(なぜ) | ・目的 ・実測寸法 |
・実測寸法=◯◯ |
How(どのように) | ・施工状況 | ・◯◯取付工事 |
②社内で書き方を統一する
黒板の記入内容は、社内で書き方を統一しましょう。たとえば国土交通省の「営繕工事写真撮影要領 令和5年版」によると、「次の項目のうち、必要な事項を」とあります。
1. 工事名
2. 工事種目
3. 撮影部位
4. 寸法、規格、表示マーク
5. 撮影時期
6. 施工状況
7. 立会者名、受注者名
8. その他
ルールが厳格に決められているわけではないので、会社ごとに書き方を統一することがポイントです。
現場監督が書き方や、項目に関してルールを定めたり、過去の写真を確認したりして情報を過不足なく記入しましょう。
③わかりやすい文字で書く
黒板に手書きで記入する際、わかりやすい文字で綺麗に書くように留意しましょう。雑に書いてしまうと、後で見返したときに必要な情報を読み取れず困ってしまう場合も想定されます。
また、スペースが許す限り、判読しやすいよう大きな文字で書くことも大事です。
国土交通省の「写真管理基準」によると、原則として「写真編集は認めない」とあるので、書き間違いがないよう注意しましょう。
④撮影時に黒板の位置に気を付ける
黒板を工事現場と一緒に写すとき、置く位置にも気をつけましょう。
黒板の角度によっては太陽光が反射して「うまく写らなかった」「書いてある文字が判読できない」といったケースもあります。
建物に黒板を立てかけたり、作業員が黒板を持ったりするなど、位置に留意しながら撮影することもポイントの一つです。
3. 工事黒板の写真を効率的に撮影・管理するアプリの種類
近年では、工事の写真撮影や管理にアプリが利用されるケースも見られます。
工事黒板の写真を効率的に撮影し、管理するアプリは以下の2つのタイプに大別できます。
●電子黒板に特化したアプリ
●工事現場の業務全体を効率化するアプリ
ここでは、それぞれの特徴とメリットをご紹介します。
①電子黒板に特化したアプリ
電子黒板に特化したアプリは、黒板そのものを「電子化」できます。黒板がアプリ画面内に表示され、必要な情報を入力し、そのまま現場の様子とともに撮影・保存する機能を利用できます。
電子黒板自体をアプリ内で記入・操作できるようになるので、実際の黒板やデジタルカメラを持ち歩く必要がなくなります。また、文字を綺麗に手書きしなくても簡単に入力できる点もメリットです。
これまで手書きで運用していた黒板を電子化したい企業におすすめです。
②工事現場の業務全体を効率化するアプリ
工事現場の業務全体を効率化するアプリを利用すると、撮影した現場写真をスムーズに共有し、簡単にクラウド上で保存・共有できるようになります。
さらに単なる写真管理だけでなく、関係者間のチャット連絡、タスク管理、スケジュール管理、ワークフロー機能など、施工管理に必要なさまざまな機能をひとつのアプリ上で利用できるようになります。
従来の手書きの黒板の運用方法は大きく変えず、スマホなどで黒板を撮影し、写真を素早く関係者間で共有したい企業や、データ共有が頻繁に必要となる企業におすすめです。
4. 工事黒板の写真管理に「施工管理アプリ」を利用するメリット
施工管理アプリとは、建設・土木現場で利用されるITツールです。
施工管理アプリを使えば、施工写真、図面、工程表、日報などをスマートフォンやパソコンを通じて一括で管理できるようになり、関係者間での情報共有がスピーディーかつスムーズに。
一つのアプリでさまざまな機能を利用できるものを選んで導入すれば、作業員が複数のアプリやITツールの操作方法を覚えなくて済みます。ITツールに抵抗のある作業員の負担軽減が見込める点もメリットだといえるでしょう。
無料版あり|建設現場で活躍する代表的な施工管理アプリ7選を徹底比較
5. 【無料版も】工事用電子黒板アプリ5選
ここでは、「電子黒板に特化したアプリ」を5つ紹介します。
アプリ名 | 対象企業規模 | 初期費用 | ランニングコスト | 機能の種類 | サポート体制 |
---|---|---|---|---|---|
現場DEカメラLITE/PRO | 中小企業 | 0円(無料版) 3,000円(有料版) |
0円 | ⚪︎ | △ |
電子小黒板PhotoManager | 中小企業 | 0円 | 0円 | ⚪︎ | △ |
どこでも写真管理Plus | 中小企業 | 0円 | 0円 | ⚪︎ | △ |
蔵衛門工事黒板 | 中小・大企業 | 0円 | 880円(1メンバー/月) | ◎ | ◯ |
ミライ工事アプリ | 中小・大企業 | 0円 | 900円〜(企業規模による) | ⚪︎ | △ |
※弊社で確認できた範囲です。詳細は各企業にお問い合わせください。
①現場DEカメラLITE/PRO
特徴
●電子小黒板機能が付いた、工事写真撮影アプリ
●「Dropbox」「Box」「RICOH Drive」の各種クラウドストレージと連携可能
●無料版は、iOSアプリをダウンロードするだけですぐに利用開始できる
●有料版は、画像改ざん検知情報を付与でき、公共工事電子納品に対応できる
費用
0円※有料版は初期費用3000円
お客様の声
ー
②電子小黒板PhotoManager
出典:工事写真撮影アプリの電子小黒板 PhotoManagerの公式ホームページ
特徴
●あらかじめ用意されたレイアウトから、撮影箇所に応じてアプリ上で小黒板を作成できる
●小黒板のサイズ・位置を自由に調整して現場写真内に配置できる
●電子小黒板を指先でタップして、入力内容の修正ができる
●改ざん検知機能に対応
●「Dropbox」「Box」「Google Drive」と連携可能
費用
0円
お客様の声
ー
③どこでも写真管理Plus
特徴
●黒板情報を事前に入力しておくことで、作成した黒板を利用した現場写真の撮影が可能
●国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」に準拠
●工事写真レイヤ化画像の撮影ができ、マーカーや注釈を追加できる
費用
費用 0円
お客様の声
ー
④蔵衛門工事黒板
出典:電子小黒板と工事写真撮影なら「蔵衛門工事黒板」「蔵衛門Pad」の公式ホームページ
特徴
●業種を問わず121,800以上の現場で導入実績がある
●デジカメと比較して、工事写真業務の作業時間を4分の1まで短縮できる
●さまざまな現場・業種の現場監督の声から生まれた豊富な黒板テンプレートを搭載
●工事写真改ざんチェック機能あり
費用
無料版 | 0円(1現場のみ利用可) |
---|---|
有料版 | 1メンバー880円/月(10ライセンスの場合) |
お客様の声
●工事黒板を持ち歩くことがなくなりました
●大規模な現場でも、統一された黒板で効率良く撮影できます
⑤ミライ工事アプリ
特徴
●電子小黒板の機能が付いた、工事写真台帳を作成するためのアプリ
●機能や操作がシンプル
●よく使う黒板を登録しておき、履歴から記入することもできる
費用
無料版 | 0円(アクセス可能な人数:1人) |
---|---|
有料版 | 900円〜、企業規模により複数プランあり |
お客様の声
●黒板の履歴機能を活用することで、時間短縮につながっています
●前は天候によって黒板の文字落ちが発生し、写真を取り直していましたが、電子黒板にして作業時間短縮につながりました
6. 工事黒板の写真撮影・管理アプリの選び方
続いて、工事黒板の写真撮影・管理アプリの4つの選び方をご紹介します。
①操作しやすい
まずは、誰にでも操作しやすいアプリを選ぶようにしましょう。現場の作業員はITツールに使い慣れていない場合も考えられるからです。
とくに電子黒板に特化したアプリは、黒板の運用方法が大きく変更になるため、使いやすさを重視して選ぶことが重要です。
②情報共有機能が利用できる
電子黒板の写真撮影だけでなく、チャットやドライブ(ファイル保管・共有)などの機能があれば、情報共有がよりスムーズになります。
一方、単一アプリで一つの機能しか搭載されていない場合には「黒板の作成・撮影にはこのアプリ」「ファイル共有にはこのアプリ」と複数のアプリを導入する必要があります。社内全員が使い方をそれぞれ覚える必要があり、労力がかかってしまうのが懸念点です。
現場の作業員を混乱させないためにも、一つのアプリにさまざまな機能を集約しているツールを選ぶと便利でしょう。
③サポート体制が充実している
サポート体制が充実しているかどうかもチェックしましょう。
導入時や、運用時にアプリ提供元からのサポートを受けられれば、スムーズな導入だけでなく効果的な運用方法を把握でき、アプリを社内に浸透させやすくなるでしょう。
④用途に合っている
先述したように、工事黒板アプリには「電子黒板に特化したアプリ」と「工事現場の業務全体を効率化するアプリ」の2種類があります。
その中から、自社が本当に必要な機能や用途を見極めて、アプリを選ぶことが重要です。
工事黒板の撮影のみを効率化したいなら「電子黒板に特化したアプリ」を、工事黒板写真の管理だけでなく施工管理全般を効率化するなら「工事現場の業務全体を効率化するアプリ」を選ぶとよいでしょう。
なお次の章では、写真管理の機能に留まらず、現場に関するあらゆる情報を一元管理できるおすすめのアプリをご紹介します。
7. 工事黒板の画像管理にも使える施工管理アプリConne
「施工管理アプリConne」を導入・活用すると、単に工事黒板の写真を効率的に管理するだけではなく、より幅広い情報を一元管理できるようになります。たとえば、以下の情報をまとめて管理できます。
●黒板以外の現場写真
●図面
●文書(見積や請求、各種申請や稟議など)
●スケジュール
●タスク
社内外に関係者が多く、複数の現場が同時に走っている場合でも、現場に関する情報共有がスムーズになる点がメリットです。
とくに写真に関しては、ドライブ(ファイルの保管・共有場所)で、バージョン管理しながらクラウドで共有できます。写真はクラウド上で自動バックアップが取られ、「いつ、誰が保存した写真か」を後から追跡できるため、安心してデータ管理を行えます。
また、チャットを交えながら写真共有もできるので、単に写真を保管場所に格納しておくだけでなく、必要な相手に適切なメッセージを添えて、わかりやすく共有もできます。
写真だけでなく、その他の情報も一緒に整理して、情報共有を円滑に行いたい企業には「施工管理アプリConne」がおすすめです。
①【事例】現場の状況をスマホで撮って共有|佐多エンジニアリング株式会社
宮崎県に拠点を置き、橋梁工事を手掛ける「佐多エンジニアリング株式会社」。
「現場クラウドConne」を使用して、建設現場の進捗状況を写真付きでリアルタイムに共有しています。
この取り組みによって社員間の情報共有が活発になり、トラブルの未然防止や対応速度の向上が図られています。
写真管理はスマートフォンを介して簡単に行われ、社内連絡やデータ保管の効率化も実現。また、Conneの掲示板やスケジュール共有機能も積極的に活用しています。
②【事例】すべてのデータをドライブに保管|株式会社マリン工業
鹿児島に拠点を置き、港湾工事に取り組む「株式会社マリン工業」。
「現場クラウドConne」を利用して写真、データ、文書の管理を効率化しています。
とくにドライブを使用して協力会社との文書共有を中心に行い、メールでのやり取りを大幅に減少させることに成功。メールと比べて、添付容量を気にする必要もなくなりました。
各種ドキュメントは現場ごとのフォルダに整理され、関係者はいつでも必要な情報にアクセスできるようにしています。外出先からもスマートフォンを使って即座に写真をアップロードして、スムーズに共有することが可能になりました。
8. まとめ
工事黒板の撮影・管理にアプリを活用することで、デジタルカメラの携行が不要になり、手持ちのスマートフォンやタブレットさえあれば、手軽に撮影・管理ができるようになります。
また、アプリによって黒板そのものをデジタル化できれば、黒板を持ち歩く必要もなくなる点がメリットです。
本記事でもお伝えした通り、アプリを選ぶ際には、以下の点をまずは会社として決めると良いでしょう。
●黒板作成・管理だけをデジタル化したいのか
●他の写真、文書、図面やスケジュールなども全部まとめて管理したいのか
この判断によって、選ぶべきアプリの種類が変わってきます。
おすすめは、黒板以外のデータもすべてまとめて管理できる、施工管理アプリです。さまざまなアプリやソフトウェアを導入してひとつひとつ操作を覚えなくて済むので、従業員や関係者の視点で負担が小さく、なおかつ導入・運用コストも節約できるでしょう。