建設業は、人件費や材料費などの先行支出が生じることもあり、資金繰りが難しい側面もあります。さらに、長期的な人手不足や、DX推進、魅力的な職場づくりなどの課題に直面しているものの、コスト面の負担から本腰を入れた取り組みが難しいと感じている会社も少なくないでしょう。

このような課題解決に向けて、助成金・補助金の活用が事業運営の助けになる場合があります。

本記事では、建設業で利用可能な助成金・補助金の種類を紹介するとともに、利用のメリットや注意点も解説します。

1.建設業でも利用可能! 助成金・補助金に関する基礎知識

まずは、そもそもの助成金・補助金の基礎知識から見ていきましょう。

助成金・補助金とは、企業が事業の立て直しや拡大のために必要な資金の一部または全額を、国や自治体から支援してもらう制度のことです。目的に応じてさまざまな種類の助成金・補助金があり、建設業でも利用できる制度が複数あります。

助成金・補助金は、公的な資金から拠出されるため、誰でも受け取れるわけではなく、申請や審査が必要です。また、制度の廃止や新設が頻繁に行われているため、最新情報をチェックしておくことが大切です。

①助成金と補助金の違い

ここで、助成金と補助金の違いを理解しておきましょう。 助成金と補助金は、それぞれ管轄と目的が異なります。

一般的に、助成金の管轄は厚生労働省で、財源は雇用保険料です。一定の条件を満たしていれば、必ず支給されます。一方、補助金の管轄は経済産業省の中小企業庁または自治体で、財源は税金です。補助金は審査に通れば交付されるほか、受付期間にも違いがあります。

助成金・補助金それぞれの違いを以下の表にまとめたので、参考にしてください。

助成金 補助金
管轄 厚生労働省 経済産業省管轄の中小企業庁、自治体
※事務局は別会社が実施
財源 雇用保険料 税金
交付 条件を満たせば交付される 審査通過が必要
受付期間 通年 公募期間がある

2.建設業で助成金・補助金の利用が必要な理由・メリット

建設業において、助成金や補助金が必要となる理由やメリットを紹介します。

①高額な取引で資金繰りが困難になりやすい

建設業の取引は高額になりがちで、さらに人件費や材料費などの先行支出が生じる可能性があります。工事が完工するまで報酬を受け取れない場合、資金繰りが滞ってしまう恐れがあります。

建設会社のなかには、受注を確保して帳簿上は利益が出ていても、現金が足りずに「黒字倒産」といった事態に陥る企業も見られます。そのような場合に助成金や補助金の制度を利用して資金を確保できれば、資金繰りを改善しやすくなるでしょう。

②2024年問題が本格化している

建設業界においては「2024年問題」が本格化している状況です。

2024年問題とは、働き方改革関連法が2024年4月1日より適用されたことによって生じる、労働環境にまつわるさまざまな問題のことです。働き方改革にともなう時間外労働の上限規制、人手不足など、建設業は複数の問題に直面している状況にあります。

助成金・補助金のなかには、人材確保・育成を後押しする制度もあるため、これらを利用することで現場の課題解決に向けて一歩前進できる可能性があります。

関連リンク
建設業の2024年問題とは?影響や対策をわかりやすく解説

③助成金・補助金は返済不要

基本的に助成金・補助金は、「融資」とは異なり返済不要です。

融資には利子や担保が必要で、返済の義務が生じますが、助成金ならば条件を満たすと必ず受け取ることができ、補助金は審査を通過すれば支給されます。

どちらの制度も、返済の必要がない点が大きなメリットだといえます。

3.助成金・補助金の注意点

「返済不要」というメリットがある助成金・補助金ですが、利用に際しては注意点があります。

まず、助成金や補助金の多くは「後払い」だという点です。たとえば、総額250万円の事業に対して3分の1の補助がある場合、はじめに全額を自社が準備しなければなりません。

また、申請のための事務処理手続きが煩雑なケースが多く、事務作業の負担が大きくなり、社内フローが適切に進まないなど問題が発生する可能性もあるでしょう。

したがって自社にとって本当に必要な助成金・補助金制度を厳選したうえで、抜け漏れなく手続きを進めることがポイントです。

4.建設業が利用できる助成金・補助金一覧

それでは、建設業が利用できる助成金・補助金を具体的に見ていきましょう。以下の表は、それぞれの概要をまとめたものです。(いずれも2024年7月時点の情報です)

名称 概要
助成金 トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース) 35歳未満の若年者や女性を、一定期間試行雇用する中小建設企業を助成
人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース) 建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録・利用にかかる費用を助成
人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース) 雇用する労働者に向けた技能実習の実施を助成
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース) 労働時間削減に取り組む中小企業を助成
業務改善助成金 生産性向上のための設備投資を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、費用の一部を助成
補助金 IT導入補助金 自社の課題に即したITツールの導入を支援
(インボイス制度対応ソフト・PC・ハードウェアなどの導入含む)
事業再構築補助金 事業再構築を支援
(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編など)
ものづくり補助金 中小企業・小規模事業者の設備投資などを支援
(革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化、生産性向上のための設備投資)
事業承継・引継ぎ補助金 事業承継をきっかけに新たな取り組みをする中小企業を支援(事業再編、事業統合にともなう経営資源の引継ぎに関する支援を含む)

各助成金・補助金の詳細は、次章で紹介します。

5.建設業向け助成金5選

まずは、建設業で利用できる助成金を5つ紹介します。

①トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

35歳未満の若年者や女性を、一定期間トライアルとして雇用する中小建設事業主を助成する制度です。

職場において「雇用管理責任者」を選任し、雇い入れた労働者を建設工事現場での現場作業に従事させていることが必要です。ただし、施工管理を行う者(設計、測量、経理、営業などに従事する者)は対象となりません。

対象者 中小建設事業主
給付額 若年・女性建設労働者1人につき
4万円/月×3カ月(最大)
申請期間 トライアル雇用終了日の翌日から起算し2カ月以内に、事業所を管轄する労働局に提出

参考:
建設事業主等に対する助成金のご案内|厚生労働省
トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

②人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース)

建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録・利用促進を目的に、CCUS登録・利用にかかる経費を助成する制度です。

この助成金の対象者は建設事業主団体で、中小構成員などに対して経費補助する取り組みを支援します。

対象者 建設事業主団体
給付額 1団体につき1事業年度(4/1~3/31)の上限額
全国団体:3,000万円
都道府県団体:2,000万円
地域団体:1,000万円
申請期間 事業終了月が4〜6月の団体:7/1〜8/31
事業終了月が7〜9月の団体:10/1〜11/30
事業終了月が10〜12月の団体:翌年1/1〜2/末
事業終了月が1〜3月の団体:3/1〜5/31

参考:
人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース)|厚生労働省

③人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

中小建設事業主が、雇用する労働者の技能の維持・向上を図るため、有給による技能実習の実施を助成する制度です。

対象者 中小建設事業主
給付額 中小建設事業主(20人以下)
経費助成 4分の3
賃金助成 8,550円/日

中小建設事業主(21人以上)
経費助成 10分の7
賃金助成 7,600円/日
など

申請期間 技能実習を終了した日の翌日から起算し、原則2カ月以内

参考:
建設事業主等に対する助成金のご案内
人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)の申請についてのご案内

④働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

生産性を向上させ、以下のような労働環境整備に取り組む中小企業事業主を助成する制度です。

● 時間外労働の削減
● 週休2日制の推進
● 勤務間インターバル制度の導入 など

たとえば労務管理ソフトウェアの導入・更新をはじめ、労働時間削減のために「土木工事積算ソフトを導入」「測量杭打ち機と重機用センサーユニットを導入」といった取り組みも助成の対象になります。

対象者 中小企業事業主
給付額 上限250万円
※成果目標によって異なる
申請期間 2024年11月29日まで
※支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、11月29日以前に受付が締め切られる場合もあり

参考:
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース) |厚生労働省

⑤業務改善助成金

生産性向上のための設備投資など(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)に取り組み、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。

対象者 ・中小企業、小規模事業者など
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
給付額 最大600万円
※最低賃金額と引き上げ対象となる労働者の人数によって異なる
申請期間 2024年12月27日まで

参考:
業務改善助成金|厚生労働省

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6.建設業向け補助金4選

続いて、建設業向けの補助金4つを紹介します。

①IT導入補助金

自社の課題に即したITツールの導入を支援する制度です。

インボイス制度に対応したソフト・PC・ハードウェアの導入や、セキュリティ対策推進なども補助対象に含まれます。

対象者 中小企業・小規模事業者
給付額 450万円以下
複数社連携IT導入枠は3,000万円以下
申請期間 2024年7月19日17:00まで(通常枠)
2024年7月3日17:00まで(インボイス枠)
2024年7月19日17:00まで(セキュリティ対策推進枠)
2024年8月23日17:00まで(複数社連携IT導入枠)
※申請期間が終了している枠について、今後の最新情報は公式サイトをご確認ください。

参考:
IT導入補助金

②事業再構築補助金

新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、または事業再編といった、事業再構築を支援する制度です。思い切った事業再構築に意欲を示す中小企業等の挑戦を支援することを目的としています。

対象者 中小・中堅企業
給付額 上限5億円
(※サプライチェーン強靱化枠、建物費も含む場合)
申請期間 2024年7月26日18:00まで
※申請期間が終了している場合、今後の最新情報は公式サイトをご確認ください。

参考:
事業再構築補助金
事業再構築補助金リーフレット
事業再構築補助金 第12回公募の概要

③ものづくり補助金

中小企業・小規模事業者による、設備投資などを支援する制度です。

革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化、生産性向上のための設備投資(機械の導入やシステム構築など)が補助対象です。

対象者 中小企業・小規模事業者 給付額 省力化(オーダーメイド)枠の上限8,000万円 申請期間 2024年3月27日まで(18次締切)
※今後の最新情報は公式サイトをご確認ください。

参考:
ものづくり補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版

④事業承継・引継ぎ補助金

事業承継をきっかけに、新たな取り組みにチャレンジする中小企業などを支援する制度です。事業再編、事業統合にともなう経営資源の引継ぎに関する支援も含まれます。

対象者 中小企業 給付額 上限800万円 申請期間 2024年4月30日まで(9次公募)

※今後の最新情報は公式サイトをご確認ください。
参考:
事業承継・引継ぎ補助金|事業承継・引継ぎ補助金事務局

まとめ

本記事では、建設業で利用可能な助成金・補助金を紹介しました。

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