現状維持バイアスとは、変化するメリットは理解できていても「変わりたくない」というバイアスが働いてしまうことです。昨今の建設業界は環境が目まぐるしく変わっています。環境の変化に対応するには、企業も変化が必要になります。
しかし、現状維持バイアスが過度に働いてしまうと現場DXや業務効率化を進めようとした際の阻害要因になるときもあります。そこで、今回は現状維持バイアスのデメリットや外し方、業務効率化へ繋がった事例を紹介していきます。
目次
1.現状維持バイアスとは
2.現状維持バイアスの要因
3.現状維持バイアスのデメリット
4.現状維持バイアスは現場DXも妨げてしまう?
5.現状維持バイアスの外し方
6.現状維持バイアスを乗り越え、業務効率化へ繋がった事例
7.まとめ
1.現状維持バイアスとは
①認知バイアスのひとつ
現状維持バイアスとは、未知のものや変化を受け入れられず、今のままでありたいと望む心理作用のことで心理学や行動経済学における認知バイアスのひとつです。
『デフォルト効果※1』や『保有効果※2』なども関係しています。
※1.人は選択肢がある場合、提示された初期値にとどまることが多い現象のこと
※2.他者にとっては価値がなくても、自分の物に対して高い価値があると考える現象のこと
現状維持バイアスは、プライベートやビジネスシーンでも頻繁に発生しております。
②日常生活で起きる現状維持バイアスの例
・いつも同じ店に行き、同じ席に座り、同じメニューを注文する
慣れ親しんだものを選ぶ心理や、変化による損失を回避したいという心理が働きます。
・新しい趣味を始めようと思っても、なかなか行動に移せない
失敗に対する不安や、現状を変えることへの抵抗感を感じます。
・健康的な生活習慣を取り入れようと思っても、なかなか続かない
変化に伴う努力や我慢を避け、現状維持を選んでしまうことがあります。
③ビジネスシーンで起きる現状維持バイアスの例
・新しい製品やサービスを導入することに抵抗がある
慣れ親しんだ方法への安心感や、失敗に対するリスク回避が影響します。
・組織改革や業務改善に反対する
変化による混乱や不安を恐れて、現状維持を望む傾向があります。
・転職や昇進を希望しても、具体的な行動を起こせない
失敗に対する恐怖や、現状を変えることへの抵抗感が働きます。
・投資や新規事業への挑戦を躊躇してしまう
リスクを避け、現状の利益を維持しようとする心理が働きます。
2.現状維持バイアスの要因
では、なぜ人は現状維持にこだわるのでしょうか。その背景には、いくつかの要因があります。そこで、次に主な要因について紹介していきます。
①選択の麻痺(Choice Paralysis)
選択肢が多すぎると、脳が処理できなくなり、何も選べなくなる状態になります。情報過多の現代社会では、商品やサービス、情報など、あらゆる選択肢が溢れているため、選択に迷い、最適な選択をすることが難しくなってしまいます。
②損をしたくない(Loss Aversion)
人は何かを獲得することよりも、何かを失うことへの恐怖の方が強い傾向があります。これは「損失回避」とも呼ばれます。そのため現状変更による損失を回避して、変化をともなわない選択肢を選ぶ傾向が強くなります。
③過去の経験に囚われる(Mere Exposure Effect)
過去に経験したことがない選択肢よりも、経験のある選択肢に安心感を感じ、現状維持を選択しやすくなります。これは、「新しいものへの恐怖」や「変化への抵抗」といった心理メカニズムと関連しています。
新しい選択肢には、未知の不安が伴います。一方、経験のある選択肢は、ある程度予測がつき、リスクが少ないと感じられます。そのため、無意識にリスクを避け、現状維持を選択してしまいます。
④サンクコスト(Sunk Cost Fallacy)
すでに投資したリソース(時間、お金、労力など)に対する感情的なコストを考慮して、意思決定をしてしまう心理です。過去に費やされたコストは、未来の意思決定には関係ないのですが、そのコストを損失として認識し、現状を変えることを躊躇してしまいます。
⑤認識の不一致(Cognitive Dissonance)
自身の考えや行動と矛盾する情報を知ると、心理的な不快感を感じます。この不快感を解消するために、情報を集めたり、解釈を変えたりして、自身の考えや行動と一致させようとします。
例えば、グループウェアを導入後、社内浸透がされていないことを分かってはいても、一部のメンバーが使っているという声だけを拾い、”便利なサービスである”と解釈を行い、契約を継続するといった施工会社もあります。
3.現状維持バイアスのデメリット
施工会社において現状維持バイアスが働いた場合、多くのデメリットがあります。その中でも、「競争力の低下」と「働きやすさの低下」について紹介します。
①競争力の低下
現状維持バイアスによって新しい技術や工法の導入が行えない場合、競合他社が新しい技術や工法を採用することで競争力を高める中、競争力が低下する可能性があります。結果として、業界内での地位や市場シェアを失う可能性があります。
②働きやすさの低下
建設業でも2024年の4月から残業上限の規制が適用され、業務時間が限られてきました。これまで通りのやりかたで施工を行った場合、納期通りに竣工できないという現場も出てくる可能性があります。
納期通り行えても、現場にしわ寄せがいくこともあります。しかし、現状維持バイアスが働くと、新しいシステムの導入も行いにくく働き方が変えられません。社員満足度も低下し、最悪の場合、社員が離れてしまうことも考えられます。
4.現状維持バイアスは現場DXも妨げてしまう?
現場DXとは、最新のICT(情報通信技術)を活用しながら、建設業や製造業などの現場作業を刷新して変革を起こすことを意味しています。
DXの定義について、総務省の資料では以下のように紹介されています。
DX:Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。
引用・出典:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負|総務省
この現場DXを進めることで、組織や企業がデジタル技術を活用して業務やプロセスを改善し、働きやすさや競争力を高めることに繋がります。
しかし、現状維持バイアスが働いてしまうと従来の方法やシステムを変えることに抵抗が生じてしまうため、現場DXを進める際の妨げになってしまい、企業としての成長が止まる可能性があります。また、現場DXが進まなければ昨今の人手不足や従業員の高齢化問題への対策も後手になってしまいます。
現場DXとは?建設業や製造業でのメリットや事例、進め方を解説
5.現状維持バイアスの外し方
では、どうすれば現状維持バイアスを外せるのでしょうか。次に現状維持バイアスを外す際の3つのポイントについて紹介していきます。
①現状維持バイアスを認知する
バイアスは無意識に感じるため、意識的に今の自分は現状維持バイアスが働いていないかを自問自答する必要があります。定期的に現在の状況に固執せず、常に改善の余地を探っていくことが大切です。
②ファクトを共有する
個人の意見だけだと説得力に欠けます。新しい情報やトレンドを積極的に収集し、事実や数字的根拠のある情報を元に現状維持と変化した場合のメリット・デメリットを関係者全員に共有しましょう。
③第三者からアドバイスをもらう
自社だけで考えていくと気付かないことも多く、時間ばかり過ぎることもあります。また、身近な人からの意見だと反発が起きやすいです。コンサルタントや専門家に意見を貰いながら、進めて行くのも現状維持バイアスを外すポイントです。
6.現状維持バイアスを乗り越え、業務効率化へ繋がった事例
ここからは、実際に現状維持バイアスを乗り越え、コミュニケーションツールを導入して業務効率化を体感した事例を紹介していきます。
①吉原建設株式会社
【導入直後の声】
会社からの指示で現場で導入することが決定した施工会社様です。現場側からするとメールと何が違うのか分からなかったため、導入直後はツールに対して好印象ではありませんでした。
【導入後の声】
様々な資料の共有を行った結果、予定調整が行いやすくなり、現場にいかなくても現場の状況がみえるようになったため協力会社さんからとても喜ばれるようになりました。画面もシンプルでわかりやすいので、協力会社の方も含め問題なく利用できたため、マンションを建てる時には絶対にいいと思います。次の現場でも使っていきたいと思います。
②福山総合建設株式会社
【導入直後の声】
元々社内でグループウェアを導入していたのですがなかなか定着せず、少数しか使ってくれていなかったので、定着するか不安でした。
【導入後の声】
今まで当たり前につかっていたメールですが、Conneに慣れてしまうと本当に面倒に感じます。メールだとパソコンからじゃないと確認できないですし、一斉連絡をしても返事は個別に来ますから確認・対応をしなければなりません。そういった煩わしさが一切ないので、メールでのコミュニケーションの非効率さに気付かせてもらいました。
7.まとめ
現状維持バイアスのデメリットについて紹介しましたが、安定性や信頼性が重視される状況におけるリスク回避としては有用です。しかし、過度に現状維持バイアスが働いてしまうと成長の妨げにもなるので、バランスを取ることが重要です。
今回、業務効率化に繋がった事例を紹介しましたが、ツール等を導入して変化を行うには社員一人一人にストレスがかかります。ストレスを軽減するには、導入から運用までのサポートや、システム自体が使いやすいものであることが必要です。
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