人手不足が長らく課題になっている建設業において、「離職率」は実際のところどのような状況になっているのでしょうか。
本記事では、建設業全体や、施工管理の離職率について具体的なデータを示すとともに、離職を食い止めるために企業ができる対策、働きやすい環境づくりに役立つITツールの活用などについてお伝えします。
1.建設業の離職率
まずは、建設業の離職率について詳細なデータを見てみましょう。
建設業は過酷なイメージが根強く残っているため「離職率が高い」と思われがちですが、実際のところは、そうとも言い切れません。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2022年における建設業の離職率は「10.5%」でした。産業全体の離職率は「15.0%」であることを踏まえれば、比較的低いといえます。
しかし、建設業へ新たに就業した労働者の割合を示す「入職率」は8.1%となっています。入職率に対して離職率の方が高いことから、建設業界内で人手不足が進んでいることが数字から読み取れます。
①就職後3年以内の新規高卒・大卒就職者の早期離職率
次に、若手人材に焦点を当てて離職率を見てみましょう。
2023年10月に公表された厚生労働省の資料によると、2020年3月卒の就職後3年以内に建設業で早期離職した新規高卒・大卒の割合は次のとおりです。
建設業 | 産業全体 | |
---|---|---|
新規高卒の早期離職率 | 42.4% | 37.0% | 新規大卒の早期離職率 | 30.1% | 32.3% |
この表から、新規高卒の早期離職率は全体よりも高い状況にあることが読み取れます。また、建設業に就職した新規大卒者も3割が早期離職しており、良い状況とは言い難いでしょう。
参考:
新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
②施工管理の離職率
施工管理の離職率に関する公的なデータは明らかになっていませんが、一般的には次のようにいわれています。
● 2級の施工管理の離職率…約10%
全産業の離職率「15.2%」と比べると、施工管理の離職率は低いといえます。
しかし、2024年3月に株式会社リクルートが報告した建設業の求人と転職の動向によると、施工管理の求人は2016年と比べて約5倍、転職者数は約3.8倍に増加しているとわかりました。
建設需要は増加しているため、施工管理の離職率が低いとしても依然として人手不足が改善されていない状況がうかがい知れます。
参考:
建設業界に迫る「2024年問題」「施工管理」求人、2016年比で5.04倍に増加|株式会社リクルート
2.建設業で施工管理が離職する理由
建設業において施工管理の離職率は低いといえども、人手不足は進んでいるため、建設関連会社は離職を食い止めるための対策が求められています。
具体的な対策について考える前にまず、施工管理職が離職してしまう理由を把握しましょう。
①仕事量が多い
施工管理は仕事量が多く、激務が続いて離職につながると考えられます。施工管理の仕事内容は、次のとおりです。
工程管理 | 工期を守れるよう、スケジュール策定や進行管理、人や重機の手配をする |
---|---|
原価管理 | あらかじめ定められた工事予算を守れるよう、資材・人件費などの管理をする |
品質管理 | 国・自治体が定める品質基準や、材料の規格を守れるよう管理をする |
安全管理 | 現場で作業員が安全に業務を遂行できるよう、安全・防火などの管理をする |
これらの基本的なマネジメント業務に加え、以下の作業や業務も含まれます。
- 協力会社やクライアントとの打ち合わせ
- 書類作成などのデスクワーク
- 役所への手続き
現場と事務所の往復にも時間がかかり、さらには人手不足で現場監督も兼任しているなど、煩雑な業務を数多く遂行しなくてはなりません。
②長時間労働や休日出勤
前述のように施工管理の仕事量は多く、長時間労働や、休日出勤を強いられることもあります。さらに、工事現場は天候や資材の未着などが原因で、工期が遅れることも少なくありません。
遅れを取り戻し、工期に間に合わせるために、残業や休日出勤をするなどの対応が必要になる場合もあります。とくに、人手不足が顕著な中小企業においては1人の施工管理職にかかる負担が大きい傾向です。
このような背景から、プライベートとのバランスが取れなくなった場合に離職が起きてしまうと考えられます。
③厳しい労働環境
建設業は肉体労働を伴い、管理業務が中心の施工管理職といっても、現場に出向いて常駐する必要があります。
夏の暑い日や、冬の寒い日でも屋外を回る必要があり、冷暖房のきいた室内にいるわけではありません。さらに、粉塵・騒音も多く、長期間働いていると体に支障が出ることもあります。
立ちっぱなしで体力が求められ、真夏の酷暑の中では熱中症リスクも高いなど、身体的負担が大きいことから離職につながる場合もあるといえます。
④人間関係のストレス
施工管理は、さまざまな人と関わることになります。上司やお客様クライアント、下請けの協力会社、それぞれの事情を考慮して調整しながら現場プロジェクトを進める必要があり、人間関係のストレスが強くなる場面もあると考えられます。板挟み状態になるなどして、高い精神的負荷が続くと、離職を考えるケースもあると推測できます。
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3.建設業で施工管理の離職を防止する方法
施工管理の離職を防止するために、どのような対策が考えられるでしょうか。建設関連会社が実施できる施策を紹介します。
①完全週休2日制の実施
施工管理の負担を軽減するためにも、完全週休2日制をしっかりと守りましょう。
建設現場では「4週8閉所」の取り組みが進められており、これは「週休2日制」を意味します。週休2日制実現のためには、施工時期の標準化によって進捗状況を明確にし、短工期の発注・受注を控えることが重要です。
また、施工主と工事請負者の間でルールを定め、工事日程、資材調達などの時間を十分に確保する必要があります。
②女性や若者の採用と定着促進
女性や若者の採用・定着に向けた取り組みを進めましょう。
現状、建設業に従事する女性・若者の割合は低い状況にあります。そこで、女性・若者の採用を強化し、施工管理の業務サポートや事務作業などを依頼することで、施工管理の負担を軽減できるでしょう。
また、採用した人材がすぐに辞めてしまうことを防ぐために、出産・育児休暇取得や教育制度の充実、業務効率化による残業時間の削減など、さまざまな角度から組織内の働き方改革を進める必要があります。
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建設業で働く女性が少ない理由とは。割合や取り組み、事例を紹介
③風通しの良い職場づくり
施工管理が身体的・精神的ストレスなどで悩んだとき、上司や先輩と気軽に話しながら、相談できる職場づくりを意識することも重要です。
組織内に風通しの良い雰囲気があり、コミュニケーションが活発な状況を築くことができれば、従業員一人ひとりにとって精神的な負担は軽減され、より居心地が良く、働きやすくなるでしょう。
④柔軟な働き方の導入
柔軟な働き方の導入もポイントの一つです。
たとえば、リモートワークでも働ける環境や、フレックスタイム制度を整備することで、従業員は育児・介護などと仕事を両立させやすくなります。
従業員が高齢化している傾向にある建設会社ならば、その家族もまた高齢を迎えていると考えられます。通院介助などのために「勤務時間を少し融通できる」「気軽に申請して介護支援制度を利用できる」といった環境が整っていると、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。その結果、長く働きやすい職場環境の構築につながるでしょう。
⑤現場DXの推進
現場DXを進めることも重要です。
現場DXとは、ITを使って現場環境を刷新し、より効率的で安全な業務環境を創出することです。
DX推進は一般的に、業務のデジタル化から始め、続いて業務フローのデジタル化、その後DXに進んでいく流れとなります。建設現場におけるDXの取り組みとして、主に次の4点が挙げられます。
施工管理アプリの活用 | ITツールで現場に必要な書類・データを一元管理し、情報共有の効率化を図る。 |
---|---|
複合現実 (MR:Mixed Reality)の活用 |
現実の空間と、仮想空間を融合させる最新技術。施工手順を現場に投影し、危険箇所を見える化して安全に施工を進める、といった活用法がある。 |
ドローンの活用 | ドローン空撮によって、目視確認が難しい、危険度が高い現場などで施工状況を安全かつスピーディーに可視化できる。測量、地形予測にも活用可能。 |
ICT建機の活用 | 重機が設計データなどを自動的に読み取ることで、より効率的かつ安全性高く施工を進められる。 |
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現場DXとは?建設業や製造業でのメリットや事例、進め方を解説
4.建設業の施工管理職をサポートするアプリ
建設現場で働く施工管理職の業務負担を軽減し、効率化を目指すにはコミュニケーションや情報共有のデジタル化から始めるのがおすすめです。
前章でも紹介した「施工管理アプリ」の導入は、組織内で小規模からでも始められて、運用が軌道に乗れば業務効率化を強く実感できる施策です。
施工管理アプリの一例として、弊社が提供している「現場クラウドConne」をご紹介します。「現場クラウドConne」を利用することで、以下のような施工管理業務の効率化が実現します。
- 部署・現場関係者ごとにアプリ上で情報共有フォルダを作ってコミュニケーションを取れる
- 資料の最新版をアプリ内に保存して、外出先や自宅からでもアクセスできる
- 「タスク」「スケジュール機能」で予定を登録、一覧表示して予定を整理できる。
紙の資料や、ホワイトボードの予定表を確認するために現場と事務所を往復する手間が省かれるので、情報共有の効率化が進み、残業時間の削減につながるでしょう。
①【導入事例】ほかの現場の様子が可視化され社員同士がフォローし合える組織へ変化|太陽技建株式会社
土木工事や舗装、解体、造園工事などを手掛ける「太陽技建株式会社」では、「現場クラウドConne」を活用しています。
社長や管理職が、人員や車両・重機などの配置を行う際の負担が大きく、現場数が多い場合に管理の目が行き届かなくなることを課題に感じていました。
そこで「現場クラウドConne」を導入。
その結果、現場の様子を毎日写真付きで可視化でき、さらに作業員の配置もスケジュール機能で容易に共有できるようになり、社員同士でフォローし合える組織に変化を遂げました。
②【導入事例】全員と平等に情報共有でき、業務内のムダが削減|尾崎建設株式会社
総合建設会社「尾崎建設株式会社」でも、「現場クラウドConne」が活用されています。
同社では以前から、業務効率化、社内コミュニケーション、情報共有不足に課題を感じていたそうです。
そこで、「現場クラウドConne」を導入し、社員全員がスマートフォンやタブレットでConneを通して、社内の情報へ平等にアクセスできる環境を構築しました。
その結果、業務上の無駄の削減や、社員の主体性・スピード感の向上につながりました。現場監督も作業員も同じ情報を得られるので、作業の段取りなどにおいて改善アイデアを提言しやすい環境づくりにつながっているそうです。
5.まとめ
本記事では、建設業の離職率、施工管理の離職率の現状を詳しく紹介するとともに、離職を防ぐために建設関連会社が考えるべき対策についてお伝えしました。
いま、建設業では人手不足が大きな課題になっています。
すでに活躍している人材や、新規採用した人材の離職を食い止め、長く安定して従事してもらうには、企業側が働きやすい環境づくりに努めることが大切です。
事例でもご紹介した通り、「情報の透明化・平等化」は、働きやすい職場づくりの一つの鍵です。従業員一人ひとりが日頃から意見を出しやすい環境ができていれば、コミュニケーションが活発になります。仕事で困難に直面したとしても、社内で率直に対話を深め、課題を解決しやすくなるでしょう。その結果、従業員一人ひとりにとって長く安心して働ける職場環境につながっていくといえます。
現場のコミュニケーション、情報共有化をオープンかつ円滑にする第一歩として、弊社が提供している施工管理アプリ「現場クラウドConne」をぜひご検討ください。まずは、無料からお試しいただけます。