「建設業のICT化」とは、建設現場でICT(情報通信技術)を活用し、作業員の負担を減らしながら生産性向上を図ることです。ICT化は、建設業の慢性的な人手不足への対策として注目されています。さらに、建設業のイメージ刷新にも貢献する重要な取り組みだといえます。

本記事では、建設業のICT化の基礎知識、注目される背景、取り組むメリットや実施のために役立つツールなどを紹介します。

1.建設業のICT化とは

建設業のICT化とは、建設現場において、以下のような生産プロセスでICTを全面的に活用することです。

  • 調査・測量
  • 設計
  • 施工
  • 検査

「ICT」は「Information and Communication Technology」の略で、インターネットを活用した情報共有を促進する技術の総称です。日本語では「情報通信技術」と訳すことができます。

たとえば、3次元測量にドローンを活用したり、施工にICT建機を用いる「ICT施工」に取り組んだりすることで、作業員の負担が減り生産性向上が実現します。

①i-Constructionとの違い

「建設業のICT化」とよく一緒に用いられる用語として、「i-Construction」が挙げられます。

「i-Construction」とは、建設現場の生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指す国土交通省の取り組みを指します。i-Constructionは、ICTの活用を含めた以下の3つの柱によって構成されています。

i-Constructionの3つの取り組み
1.ICTの全面的な活用(ICT施工)
  • あらゆる建設生産工程において、ICT(情報通信技術)を全面的に活用する
2.全体最適の導入
  • 建設生産工程、維持管理工程、規格などの標準化を進める
  • 現場ごとに規格・工法が異なって生産性が下がるのを防ぐ
3.施工時期の平準化
  • 公共工事の件数を年間で平準化する
  • 閑散期・繁忙期の偏りをなくし、適切な工期を確保する

参考:国土交通省におけるインフラ分野のDX
表からわかるとおり、ICTは、i-Constructionの取り組みを進めるなかで不可欠な要素の一つとなっています。

2.建設業でICT化が求められる背景

建設業でICT化が求められている理由を詳しく見ていきましょう。

①低い生産性

建設業でICT化が求められる背景の一つに、建設業の労働生産性が低い点が挙げられます。国土交通省による「労働生産性の比較」に関するグラフを見てみましょう。
労働生産性の比較(2019)
出典:国土交通省におけるインフラ分野のDX|国土交通省 p.4
2019年における産業別の労働生産性を比較してみると、建設業は製造業よりも生産性が低く、宿泊業とほぼ同等の結果でした。

建設業には「屋外での作業、一品生産」という特性があります。一方、製造業は「屋内での作業、大量生産」であり、比較的ICT化を実施しやすい特性を持っている産業だといえます。

しかし建設業は、日本のインフラ整備や災害対策を担う重要な産業であるため、ICT化を進めて生産性向上を図ることが重要です。

②慢性的な人手不足

建設業では慢性的な人手不足に陥っているため、生産プロセスをICT化して効率的に業務を進めることが求められています。

建設業就業者数は2022年時点では479万人で、1997年の685万人と比べると大幅に減少しています。さらに、技能者の高齢化が進み、60歳以上の技能者が77.6万人で、10年後にはその大半が引退すると考えられます。その一方で建設需要は増加しているため、多くの現場で慢性的な人手不足が発生しているのが現状です。

今後、離職者の穴を埋め、効率的な作業を実現するためには、ICT施工の実施が必要だといえます。
参考: 建設業を巡る現状と課題|国土交通省

③3Kから新3Kへイメージの刷新

ICT化による建設業のイメージ改善も期待されています。

建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」といったイメージを持たれがちな業界です。そこで、ICT化を実施し、技能者の安全確保・負担軽減などを図ることで、業界をとりまくイメージが「新3K(給料が良い、休暇が取れる、希望が持てる)」へと刷新されると期待されています。

ICT化によって労働環境が改善され、若者が建設業に対して良いイメージを持つようになれば、若い世代の働き手が増え、人手不足の解消につながるでしょう。

3.建設業でICT化を推進するメリット

ここからは、建設業でICT化を推進するメリットを具体的に見ていきましょう。主に4つのメリットがあります。

①作業時間の削減

建設業の生産プロセスをICT化することで、作業時間の削減が期待できます。

国土交通省の資料によると、測量から電子納品までの作業時間を「従来の方法」と「ICT化」で比較したところ、土木工事において約32%の削減効果が見られました。
延べ作業時間縮減効果(ICT土工)
出典:国土交通省におけるインフラ分野のDX|国土交通省
作業時間が減り、作業員1人あたりの負担が軽減すると、人手不足問題の緩和にもつながると考えられます。

②安全性の向上

ICT化によって、作業員の安全性向上につながります。

現場でICT施工を実施することで、作業員と、危険性の高い建設機械とが互いに近い距離で作業を行う時間が減少し、安全性を確保できるためです。

建設業の労働災害が発生する要因の一つに、「建設機械等の転倒、接触」が挙げられます。ICT施工によって作業員は、建設機械が動作する場所から離れることができるので、危険回避につながります。

③施工精度の向上

ICT化によって、データを活用した高精度の施工が実現する点もメリットです。一例として、「ドローン測量」が挙げられます。

ドローンにカメラを搭載し、空撮した写真から点群データ(無数の点の集まりから取得できるデータのこと)を処理します。そのデータを、設計段階で作った3Dモデル(縦・横・高さのデータがわかる、3次元の設計モデル)と比較することで、施工の進捗状況を素早く、正確に把握できるようになるため、施工の精度が向上します。
土量比較計算
出典:[ICT活用事例]ドローン活用空撮・地形測量|建設業労働災害防止協会
たとえば、人が目視で確認・撮影・測量するのに苦労するような、災害復旧工事や、斜面掘削工事などに役立ちます。作業員の安全性や、作業スピードが飛躍的に向上するでしょう。

②職場環境の改善

ICTの活用は、職場環境の改善にもつながります。

デジタルツールの導入によって現場作業が効率化することで、残業時間や休日出勤の削減を期待できます。作業員一人ひとりにとって働きやすい職場を実現できるでしょう。

4.建設業のICT化に役立つツール

建設業のICT化に役立つツール
ここからは、建設業のICT化を実行するうえで役立つツールを具体的に紹介します。

①施工管理アプリ

ICT化を推進して生産性向上を目指すなかで、工事関係者間での情報共有の促進は欠かせません。

そこで、まず必要なツールとして「施工管理アプリ」が挙げられます。

施工管理アプリは、工事に関係する各種書類や図面、写真、データなどを一元管理できるITツールです。工事関係者が各自、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから最新情報にアクセスできるようになるので、情報共有のプロセスを大幅に効率化でき、社内外の関係者との連携が円滑になります。

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②ドローン

ICT施工でドローンを活用することで、測量工程を効率化できます。たとえば、次のような目的・活用法が挙げられます。

  • 空中写真測量…ドローンを飛ばして空中から写真撮影を行い、土地の形状や地形などを計測してデータ化する量
  • レーザー測量…ドローンにレーザースキャナーを搭載し、地形などの計測・解析を行う
  • 現場管理写真の空撮…ドローンを飛ばして品質管理の目的で継続的に写真撮影を行う

インフラ設備や高層ビルなど、人が立ち入りにくい場所でもドローンを使うと安全に撮影でき、大幅な業務効率化につながります。

③ICT建機

ICTを搭載した「ICT建機」も活用できます。主なICT建設機械として、以下が挙げられます。

  • ICTバックホウ
  • ICTブルドーザ
  • ICT振動ローラ
  • ICTモータグレーダ

たとえば、ドローンから取得した測量データに従って3Dモデルを生成し、設計図と重ね合わせ、差分となる土の量をソフトウェアによって算出します。そのデータをICT建機に読み込ませると、施工作業の半自動化が実現します。

④現場監視カメラシステム

現場監視カメラシステムの導入で、作業員の安全性を確保しながら、現場管理が実施できるようになります。

物体認識や動体認識などの技術を活用した複数のカメラによって、現場の監視を行います。作業員と重機を識別する仕組みのため、両者が近づくなどの危険が迫るとアラートが鳴り、早期に危険を察知しやすくなります。

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5.建設業のICT化に関する課題

ここからは、建設業のICT化をとりまく課題を見てみましょう。

①ICTの導入にコストがかかる

ICTの導入には、高額な初期投資が必要です。たとえばICT建機は約3,000万円前後、写真測量ドローンは100万円前後といった購入費用がかかります。

しかし、中小企業が多い建設業界では、高額の初期投資が難しく、導入を断念せざるを得ない場合もあると考えられます。

1)ICT化に活用できる補助金・助成金

中小企業で「思い切ってICT化に踏み切りたい、しかし、資金繰りが心配だ」という場合には、補助金・助成金に関する情報をチェックしてみましょう。次の表で簡単に一例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

名称 概要
補助金 ものづくり補助金 生産プロセス改善のための設備投資などを支援
事業再構築補助金 新分野展開など、事業再構築への挑戦を支援
助成金 人材開発支援助成金 新規事業の立ち上げ、デジタル人材の育成など、人材育成を支援
補助金 IT導入補助金 経営課題を解決するための、ITツールの導入を支援

②新技術の社内浸透に時間がかかる

建設業では働く人の高齢化が進んでいるため、企業内に新しい技術を導入しても、働き手からの受容に時間がかかってしまうという課題も考えられます。

ドローンやICT建機などを使いこなすには、一定のITリテラシーが必要です。また、これまでの仕事の進め方を変えることに抵抗を示す人もいるかもしれません。

したがって、ツールの新規導入を検討する際には、導入前後のサポート体制が充実していて、社内浸透のプロセスまで相談に乗ってくれる提供元を選ぶことも重要です。

6.【導入事例】建設業のICT化は情報共有のデジタル化から

本記事では、ICT化実行のためのさまざまなツールについて解説しました。そのうち、「施工管理アプリ」の導入事例を紹介します。

①社員全員に情報を確実に共有|セフティライフ株式会社

総合建設業「セフティライフ株式会社」では、施工管理アプリを活用しています。

以前は社員間での電話連絡がうまくいかず、現場の状況を正確に伝えられないなど、もどかしさやストレスを感じていたそうです。

そこで、施工管理アプリを導入し、ホワイトボードの代わりにアプリ上で部署や物件ごとに予定管理できるようにしました。その結果、情報共有がスムーズになり、仕事の段取りも円滑になった事例です。

セフティラフ株式会社様の導入事例
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②予定調整など情報共有が快適に|株式会社富久

土木工事業、とび、管工業、一般廃棄物収集運搬業などを手掛ける「株式会社富久」でも、「施工管理アプリ」を活用しています。

以前から、社内コミュニケーション改善を目的にチャットツールを導入していました。しかし、「スケジュール共有の機能がない」「既読状況を確認できない」など、物足りなさを感じていたそうです。

そこで、「施工管理アプリ」に切り替え、1つのアプリでメッセージのやり取りや、スケジュール共有、情報共有ができるようになりました。

アプリを開けば現場の報告や、作業予定を確認できるようになったことで、帰社後の相談時間の削減に成功。現場の業務に、より集中できるようになりました。

株式会社富久様の導入事例
株式会社富久様の導入事例はこちらから

7.まとめ

本記事では、建設業のICT化について基本的な知識や導入事例を解説しました。

「今すぐ、自社が実践できる項目はなんだろう?」「大規模の投資は、今すぐにはできない」と悩んでいる場合、まずは「施工管理アプリ」の導入から始めてみませんか?

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