非常時における工事関係者の迅速な安否確認とBCP(事業継続計画)対策は、昨今の大規模自然災害が多発する環境において、不可欠の取り組みです。

とくに「安否確認アプリ」の活用は、現場関係者の迅速な安全確認と、効率的なコミュニケーションを維持するうえで重要な役割を果たします。

そこで本記事では「安否確認アプリ」とは何か、種類、建設業におけるBCP対策としての必要性を解説します。建設業界で活用できる安否確認・BCP対策アプリの選び方について詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。

1.安否確認アプリとは

「安否確認アプリ」とは、自然災害などの緊急時に、スマートフォンで従業員とその家族、工事関係者らが無事かどうかを把握するためのツールのことです。

「緊急時の重要な連絡は、電話で」と考える方も多いかもしれません。しかし誰もが同じように考えて電話の利用が集中すると、回線が混雑してつながりにくくなります。また2011年3月11日に発生した東日本大地震では、地震でケーブルが切断されるなど、物理的に通信不可能な状況も生じました。

そこで「安否確認アプリ」をあらかじめスマホにダウンロードして用意しておけば、電話が使えない状況であっても迅速に関係者の安否を確認しやすくなるのです。

①個人向けと法人向けの2種類がある

安否確認アプリを大別すると、「遠方で一人暮らしをする高齢の親向け」などの個人利用を想定した製品と、企業のBCP対策として用いられる製品の2種類があります。次の表は、それぞれのポイントを簡単にまとめたものです。

機能 利用対象者 用途
個人向け安否確認アプリ 離れて暮らす家族の安否確認 個人 「外出/在宅」「生活リズム」「活動量」などの確認
法人向け安否確認アプリ 緊急時の従業員・関係者の安否確認 法人(企業、各種団体、学校など) 災害発生などの緊急時に、自社の従業員・関係者の安否をスマホで迅速に把握、集計

本記事では、後者の「法人向け安否確認アプリ」に焦点を当てて紹介します。

2. 法人向け安否確認アプリの種類


法人向けの安否確認アプリには、大別して2つのタイプがあります。それぞれの特徴を詳しく紹介します。

①安否確認に特化した専用アプリ

1つ目に紹介するのが、「安否確認を行う機能に特化したアプリ」です。

たとえば「従業員と家族の状況」「出社が可能かどうか」など、最低限の確認を取る機能に絞り込まれています。

豪雨・地震などの自然災害が発生した場合、気象庁の情報と連携して安否確認の文面を自動配信・出し分けできる製品もあります。次の表は、代表的な機能をまとめたものです。

▼代表的な機能

機能 概要
自動配信 あらかじめ設定しておいた安否確認の文面を、非常時に対象者へ自動配信。未回答者にはさらに自動で再配信できる
手動配信 安否確認送信時、自動配信/手動配信を切り替えられる
気象庁の情報連携 気象庁発表の情報と自動連携し、震度・エリア別に文面の出し分けができる
外部システム連携 従業員から寄せられた回答を、グループウェアや人事システムに自動連携できる。あるいは、LINEと連携して配信できる
集計 従業員から寄せられた回答を、グループウェアや人事システムに自動連携できる。あるいは、LINEと連携して配信できる
集計 従業員から寄せられた回答を自動集計できる
家族の安否確認 従業員本人だけでなく、その家族に対しても安否確認連絡を配信できる

②BCP対策につながるアプリ

2つ目に紹介するのは、安否確認の送信・集計に加えて、BCP対策機能を備えたアプリです。

「BCP(Business Continuity Plan)」とは「事業継続計画」のこと。自然災害などが発生した際に、重要な業務が中断しないように、あるいは中断した場合でも、迅速に復旧し業務中断によるリスクを最低限に抑える計画を指します。

緊急時も速やかに業務を再開するには、互いに離れた環境にあってもコミュニケーションが取りやすいツールの活用や、データの保管・バックアップができるアプリが必要です。

コミュニケーションツールでやり取りができれば「誰が業務再開できるか」「現場の状況はどうなっているか」など、テキストだけでなく写真や動画も交えながら共有できます。さらに組織外の工事関係者も招待できる機能を使えば、情報共有や指示出し、その後の復旧活動や業務再開がスムーズになるでしょう。

また業務に関連するデータをクラウド保管でき、バックアップが取れるアプリを導入しておけば、災害時に社内のサーバーやパソコン、機器が破損してしまってもアクセス可能です。たとえば非常時に急遽、在宅勤務に移行したとしても、インターネット環境さえあれば関係者とスムーズに連絡を取りながら、業務遂行の体制を維持できます。

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3. 建設業における安否確認とBCP対策

建設業は、災害時に公共インフラの復旧工事や支障物撤去などに携わり、社会活動の早期回復において重要な役割を担っています。

つまり建設会社は、通常業務の継続だけでなく、災害時に新たに発生する業務にも対応できるようなBCP対策を策定する必要があります。

そこで緊急時の安否確認から災害復旧へフェーズが移行した際にも、必要なコミュニケーションを継続できる環境を用意しておくことが大切です。ここでは、緊急時の建設業におけるアプリ活用のケースを紹介します。

①専用アプリを活用

緊急時にはアプリを活用し、従業員や家族の安全確保を第一に考えることが重要です。とにかく迅速に、無事の確認を最優先事項としましょう。ここで役立つのが「安否確認専用アプリ」です。

専用アプリで無事を確認した後は、チャットツールなど、別のコミュニケーションツールを活用しながら事業継続や復旧作業を進めていきます。

②施工管理アプリを活用

緊急時の安否確認やBCP対策として、「施工管理アプリ」を導入し、普段から活用しておくのも有効な手段です。

「施工管理アプリ」には、以下のような緊急時に必要な機能が搭載されているため、複数のツールを導入する必要がなくなります。

● 工事関係者間のコミュニケーション機能
● 工程表・写真・図面データを保管できるドライブ機能

コミュニケーション機能を使うと、単に安否確認ができるだけでなく、その後の事業継続や災害復旧フェーズにおけるやりとりにも役立ちます。さまざまな資料・データをドライブ保管できる機能も利用できるため、「施工管理アプリ」の導入はBCP対策として有効です。

建設業は、ピラミッド型組織で事業拠点や協力会社の数が多くなりがちです。また地震・豪雨などの自然災害が起こった場合、施工中の建物が影響を受け、二次災害を引き起こすリスクも想定されます。

そこで「施工管理アプリ」を使うと、関係者の無事を迅速に確認できるだけでなく、必要なデータを参照しつつ、関係者と円滑に仕事を進められるようになるでしょう。

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4 . 建設業で安否確認・BCP対策として「施工管理アプリ」を利用するメリット

安否確認とBCP対策として、「施工管理アプリ」を活用する3つのメリットを紹介します。

①複数の機能を利用できる

施工管理アプリには、安否確認やBCP対策に必要な機能がまとまっているため、複数の異なるツールを導入する必要がなくなります。

一方、安否確認に特化した専用アプリを利用すると、BCP対策としてコミュニケーションツールやデータバックアップツールを別途、導入する必要があります。複数のツールを使うことになり、管理や運用の手間だけでなくコストもかさみます。

建設業にはITツールに苦手意識のある人も見られるため、「複数のツールを導入するのは好ましくない」「できるだけシンプルな運用にしたい」と考える会社も多いのではないでしょうか。

そこで自社にとって使い勝手の良い「施工管理アプリ」を導入し、普段から使い慣れておけば、緊急時に従業員も対応しやすくなるでしょう。

②電話やメールよりも安否を確認しやすい

災害時は、電話回線が混雑してつながりにくくなります。社内で緊急電話連絡網を作成したとしても、連絡網の途中で次の人につながらない場合、連絡がすみずみまで行き渡らなくなってしまいます。

またメールによる安否確認では、受信した相手がそのメールを開いたかどうかの確認ができません。

しかしアプリなら、既読確認ができる製品もあります。電話やメールでの安否確認は取りまとめが難しい一方で、「施工管理アプリ」ならインターネット環境があれば確認を取りやすく、迅速な対応が可能になります。

関連リンク
建設業で使える安否確認メールの例文!ポイントや課題も紹介

③安否確認係の負担が軽減する

「施工管理アプリ」の中には、チャット機能を搭載した製品もあります。チャット機能で従業員をグループ化し、連絡事項を送信すれば、個別に連絡を取る必要がありません。

チャット機能は、安否確認が取れた後にも役立ちます。たとえば建設現場における二次災害の防止対応など、その後の業務指示を出しやすくなるでしょう。

5 . 【無料版も】建設業におすすめの安否確認・BCP対策ができるアプリ6選

建設業におすすめの安否確認・BCP対策アプリを6つ紹介します。

アプリ名 対象企業規模 初期費用 ランニングコスト 追加費用 機能の種類 サポート体制
現場クラウドConne 中小 0円 1万円(20ID)
※無料版あり
容量追加100GB/2,000円
Biz安否確認/一斉通報 大手・中小 10万円 1.8円〜(20ID) 家族安否確認、音声入力などはオプション
セコム安否確認サービス 大手・中小 5.5万円 3.3万円(20ID) 有料オプションあり。詳細は要問合せ
トヨクモの安否確認サービス2 大手・中小 0円 6,800円〜(20ID) 家族安否確認や、外部システム連携は上位プランで利用可能
安否確認 for LINE WORK 中小 0円 220円(1ID) 不明
富士通の統合コミュニケーションサービス alwaive 大手・中小 個別見積もり 個別見積もり 不明

※弊社で確認できた範囲です。詳細は各企業にお問い合わせください。

①現場クラウドConne

Conneのホームページ

出典:現場クラウドConneのホームページ

特徴

● 社内や協力会社に対してメッセージの一斉連絡、既読確認、資料の共有ができる
● すぐに使えるシンプルな操作性
● いつでもどこからでも、最新の図面や書類にアクセス

費用
初期費用 0円
ランニングコスト 1万円~(20ID) ※無料版あり
その他オプション データ容量追加 100GB/2,000円
お客様の声

● PCから確認できる情報が増え、会議の省略や、協力会社とのスムーズな連携に役立っている
● 現場監督だけではなく社員全員で情報共有でき、チームワークが向上した

②Biz安否確認/一斉通報

Biz安否確認

出典:Biz安否確認/一斉通報のホームページ

特徴

● 指定した震度以上の地震が発生した場合、気象庁発表の情報をもとに安否確認を自動送信
● 自動リトライ送信で返答を催促する手間を削減
● 自動で返信を集計

費用
初期費用 10万円〜
ランニングコスト 1.8万円〜(20ID)
その他オプション 家族安否確認、音声入力などはオプション
お客様の声

● 管理者もユーザーも使いやすく、NTTの信頼性や実績も評価している
● 設定の多様性も、導入の決め手になった

③セコム安否確認サービス

セコム安否確認サービス

出典:セコム安否確認サービスのホームページ

特徴

● 24時間365日体制で緊急対応の初動をサポート
● BCP対策のための相談窓口・訓練実施も充実
● 契約社約8,900社、利用者約820万人

費用
初期費用 5.5万円(無料体験後)
ランニングコスト 3.3万円(20ID)
その他オプション 有料オプションあり。詳細は要問合せ
お客様の声

● 従業員の個人情報の管理や、連絡網の策定が不要になる。一斉送信可能なシステムで、選択式の簡易質問によって迅速な回答が得られ、安否確認が容易になる
● シンプルな操作で報告できる

④トヨクモの安否確認サービス2

トヨクモの安否確認サービス2

出典:トヨクモの安否確認サービス2のホームページ

特徴

● 初期費用0円、1カ月から使える。解約費用もなし
● 全国一斉訓練を継続的に実施
● 自社の防災力チェックを比較分析できる

費用
初期費用 0円
ランニングコスト 6,800円〜(20ID)
その他オプション 家族安否確認や、外部システム連携は上位プランで利用可能
お客様の声

● 緊急時どこにいても操作ができる
● 拠点・部署別に安否確認や状況把握ができる

⑤安否確認 for LINE WORKS

安否確認 for LINE WORKS

出典:安否確認 for LINE WORKSのホームページ

特徴

● LINE WORKSを導入している企業が利用できるソリューション
● チャットbotが質問形式で社員に安否確認を実施
● リアルタイムに回答状況を集計し、社員の状況を可視化

費用
初期費用 0円
ランニングコスト 220円(1ID)
その他オプション 不明
お客様の声

● 社員が普段から利用しているLINE上のソリューションなので、使用方法の説明がほぼ不要
● BCP対策を強化し、より安心して働ける環境を整備できた

⑥富士通の統合コミュニケーションサービス alwaive

富士通の統合コミュニケーションサービス

出典:富士通の統合コミュニケーションサービス alwaiveのホームページ

特徴

● 安否確認だけでなく、日頃からビジネスチャットとして利用可能
● 社内だけでなく、サプライヤーからの状況報告も一元管理
● 大規模かつセキュリティの高いデータセンターでデータを管理

費用
初期費用 個別見積もり
ランニングコスト 個別見積もり
その他オプション 不明

6. 建設業における安否確認・BCP対策で利用できるアプリの選び方

安否確認・BCP対策アプリの選び方のポイントとして、以下の5点に着目すると良いでしょう。

①24時間365日安定して使える

安否確認アプリは、インターネット回線が混雑しやすい緊急時に使用するためのものです。24時間365日、常に安定稼働を提供できるサービスを選びましょう。

②操作性が高い

ITツールの使用に慣れていない自社の従業員にとって、直感的に操作しやすいアプリを選ぶことが大切です。使いにくいアプリでは、緊急時において迅速に安否状況を確認できないからです。

③コミュニケーションツールとして利用できる

メッセージだけでなく、写真や動画も共有できるアプリを選びましょう。。災害発生時には、初動対応として従業員へ安否確認の文面を一斉配信するだけでなく、状況を詳しく把握し、情報共有や指示を行う必要もあります。そのためコミュニケーションツールとして利用できる製品を選ぶと便利です。

④ドライブに資料を保管できる

重要なデータや、災害時に必要なBCP資料などの保存ができる機能を備えているかどうかも確認しましょう。事務所のPCやサーバーなどが破損しても、インターネット環境さえあればどこからでもドライブの資料にアクセスでき、事業継続や復旧活動を継続できるからです。

⑤サポート体制が充実している

導入時だけでなく、運用中にも充実したサポートを受けられるかどうかもチェックしておきましょう。

導入後もアプリのサポート窓口に相談できる体制があれば、自社に必要なBCP対策を検討し、策定する一助になります。「社内にアプリの利用を浸透させるには?」といったアドバイスも受けられれば、従業員のアプリ利用に対する理解も進むでしょう。

7. 建設業の安否確認・BCP対策につながるアプリなら

建設業向けコミュニケーションツール「現場クラウド Conne」は、安否確認・BCP
対策におすすめです。

「施工管理アプリ」としても利用できるConneには、連絡内容の一斉連絡、既読確認ができるので、安否確認の時間短縮が実現できます。また写真・動画で状況確認もでき、施工現場の詳細な状況報告も可能です。

さらにドライブ機能で図面・写真・書類・データなど、業務に必要な資料を一元管理し、バックアップできる機能も備えています。

【事例】図面やBCPに関する資料を保管|株式会社富久

株式会社富久

出典:株式会社富久のホームページ

愛媛県の建設事業者「株式会社富久」では「現場クラウド Conne」を導入。BCP資料や、災害時に参照すべき必要な資料を日頃からデジタル保管し、定期的にBCP訓練も実施しています。

資料のデジタル化は、普段の現場でも役立っているそうです。現場で使用する資料や図面は以前、印刷して持ち歩いていましたが、スマホアプリから容易に確認できるようになったといいます。

強風の日に紙の図面が飛ばされてしまうと、作業中の怪我・事故につながる可能性もあるため、資料のデジタル共有は日頃のリスク低減にも貢献しています。

株式会社富久の事例はこちらから >>

8. まとめ

災害発生時などの緊急時、第一に行動すべきことは、従業員とその家族の安全確保です。

そのために安否確認アプリの導入と、使用に関する訓練をしておくと、いざというときの迅速な対応につながるでしょう。

また、安否確認の連絡だけに留まらず、その後の状況確認やさらなる指示出し、重要なデータのバックアップ機能も備えた「施工管理アプリ」の導入が、BCP対策の観点から有効だといえます。

コミュニケーションとデータ保管を一元化。
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