建設業界の人手不足は、業界において長きにわたる深刻な課題です。
本記事では、人手不足の現状と原因をデータで解説し、具体的な対策を提案します。
建設関連会社の責任者の方は、業務改善のための参考としてぜひご活用ください。
1.建設業における人手不足の現状・原因
建設業における人手不足の現状と、その背景について詳しく見ていきましょう。
①就業者数が減少し人手不足倒産が増加している
建設業で働く人は、1997年(平成9年)のピーク時以降、減少傾向にあります。国土交通省によると、1997年には就業者が685万人いましたが、2022年(令和4年)には479万人にまで落ち込みました。
その一方で、建設投資額はピーク時(1992年・平成4年)の約84兆円から、2010年(平成22年)には42兆円に一旦半減したものの、その後ふたたび増加傾向に転じ、2022年には約67兆円の見通しです。
つまり建設需要が増加している状況のなか、人手不足が進んでいるのが現状です。
また建設業界では、「人手不足倒産」に陥る件数も顕著になっています。帝国データバンクによると、2023年の建設業界の倒産数は91件で、前年比の約2.7倍だったと報告されています。今後も人手不足が続けば、人手不足倒産は高水準で進むという予測も示されています。
参考:
建設業を巡る現状と課題|国土交通省
人手不足倒産の動向調査(2023 年)|株式会社帝国データバンク
②若手不足と高齢化が進んでいる
建設業における若手人材の不足と高齢化も深刻です。国土交通省によると、建設業に従事する人のうち、29歳以下は1割に留まり、3割以上が55歳以上と、高齢化が進んでいます。
このまま若手不足が続けば技能の継承が難しくなり、優れた技術が失われる恐れも指摘されています。
29歳以下の人材が1割に留まる理由として、建設業務は業務負荷が高いイメージがあり、そもそも就業を敬遠していると考えられます。
③新規高卒の離職率は全産業より高い
若手の離職率が高い点も課題のひとつです。
厚生労働省が2023年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、2020年に建設業に就職した新規高卒の離職率は42.4%でした。これは、全産業の新規学卒者の離職率37.0%と比較すると、高い水準だといえます。
一方、新規大卒で建設業に就職した人の離職率は30.1%で、全産業における大卒者の離職率32.3%とそれほど変わりません。
また、電気設備業界専門の求人サイト「工事士.com」を運営する株式会社H&Companyの調査によると、建設業における離職理由について「収入が少ない」と回答した人が16.0%と、最も多い結果に。
建設業の平均年収を全産業と比較した場合、70万円ほど高いものの、大手と中小企業の年収格差は250万円だと述べられています。
ひとくちに建設業といっても、企業規模によって収入の差が大きく、業界全体で見て賃金の改善が進んでいない点も、離職が多い原因のひとつだと考えられます。
参考:
新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省 【株式会社H&Companyの建設業調査レポート】中小規模企業の給与水準向上が離職を食い止める糸口に ー建設技術者の離職理由と給与動向に関する調査ー|株式会社H&Company
④円安で外国人材が日本で働く魅力が薄れている
現在の円安の状況下で、外国人材にとって日本で働く魅力が薄れている点も挙げられます。
国土交通省「建設分野における外国人材の受入れ 」によると、建設分野で活躍する外国人の数は約11万人で、全産業の約6.4%を占めます。在留資格別に見ると、2022年における技能実習生は過去最多の約7万人です。さらに2021年には、建設業が最も多い割合で技能実習生を受け入れています。
ところが現在、円安が進んでいるため、ドル建て換算すると日本の賃金は低下傾向です。この状況が続くと、外国人材は日本を選択肢から外す可能性が高いと考えられます。
参考:
建設分野における外国人材の受入れ|国土交通省 令和3年度における技能実習の状況について(概要) |外国人技能実習機構
⑤大手建設会社に人材が集中しやすい状況になっている
大手建設会社に人材が集中し、業界全体で人手を適正に配置・確保できていない点も課題だといえます。
大手建設会社では賃上げが進み、2023年には前年度を上回る賃上げを実施した建設会社も見られました。対して、中小企業では経営体力がそれほど大きくないため、賃上げへの対応が容易ではありません。
しかし人材不足への対応を行わず問題が長期化すれば、中小企業の人手不足倒産につながる恐れもあります。
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2. 建設業で人手不足を解消するための対策
限られた人手で建設需要に対応するためには、以下の対策が必要です。
● 業務効率化
● 省人化
● 労働環境の改善で離職を低減
ここでは5つの対策を具体的にご紹介します。
①デジタル化による業務効率化を実現する
業務効率化や、生産性向上を目的として、デジタル化を推進しましょう。たとえば、次のような取り組みが挙げられます。
● 職人の手作業をコンピュータが解析・言語化して、若手育成に活用する
● ICT建機の導入や、3Dデータの活用で、施工や測量の工数を大幅に削減する
国土交通省は主に土木工事を対象に、測量・設計における3Dデータの活用、ICT建機の導入を促す「i-Construction」の取り組みを推進しています。
デジタルデータの活用で、人の経験や勘に頼らずデータに基づいた判断ができるようになります。無駄を省きながら、精度の高いアウトプットが期待できるでしょう。その結果、工期の大幅な短縮や、現場作業の省力化など、生産性向上につながります。
②施工管理アプリを活用する
比較的手軽に導入できるデジタル化の取り組みとして、「施工管理アプリ」の活用が挙げられます。「施工管理アプリ」とは、建設業界に特化し、業務効率化を目的としたアプリのことです。
写真、図面、工程表、日報など、施工管理上必要なデータや文書、ファイルをスマホやパソコンで一元管理できるようになります。工事関係者間の円滑な情報共有・コミュニケーションを促進し、業務効率化・生産性向上に貢献する点がメリットです。
施工管理アプリを比較・選定する際には、「ITが苦手な従業員も、プライベートで利用するスマホアプリのように、抵抗なく操作しやすいか」を一つの着眼点にするのがおすすめです。誰にとっても親しみやすく、操作しやすいアプリならば、社内に浸透しやすくなるからです。
代表的な施工管理アプリについて、以下の記事で紹介しています。あわせてぜひご覧ください。
関連リンク:無料版あり|建設現場で活躍する代表的な施工管理アプリ7選を徹底比較
③建設ロボットを導入して省人化を進める
ロボットの導入による省人化もひとつの方法です。
建設ロボットの一例として、職人の手作業の代わりに鉄筋結束をこなす「鉄筋結束ロボット」が挙げられます。大手建設会社のなかには、自社で建設ロボットの開発を進める企業も見られ、コンクリート養生を支援するロボット、資材を自動運搬するロボットなどが活用されています。
ロボットの導入で省人化が進めば、現場の職人は単純作業や、負荷が高く危険を伴う作業から解放されます。
空いた労力は、現場作業とは別の取り組みに振り分けることが可能です。後進の教育など、長期的な事業継続のうえで重要な業務に充てられるでしょう。
④女性が働きやすい職場づくりを行う
女性が働きやすい職場づくりを進めることも重要なポイントです。
建設業は男性主体の業界でしたが、近年は女性就業者数も増加しています。しかし就業の継続が課題となっているため、女性が働きやすく定着しやすい職場づくりが重要です。 たとえば、出産・育児を迎えても希望するキャリアを築けるよう周囲の理解を促進する、女性用トイレや更衣室を整備するなど、女性に対するフォローアップ体制の強化が考えられます。
また、建設業に従事する若手層・女性社員・新規雇用者を対象として、新しい職域を創設する動きが見られます。ITとコミュニケーションスキルで現場を支援する「建設ディレクター」がその一例です。女性が活躍しやすい新たな職種を検討・導入するのも良いでしょう。
関連リンク:建設ディレクターとは?建設業に必要な理由やメリット、事例を紹介
⑤労働環境を改善して業界イメージを向上させる
若手人材の確保・定着には、労働環境を改善し、建設業のイメージを向上させる取り組みも重要です。
現状は、ほかの産業に比べて労働時間が長く、休日が少ない傾向にあります。これは現場作業が天候に左右されやすく、スケジュール通りに進まないケースも多いためです。また、無理な工期で受発注が行われていることも一因でしょう。
そこで、以下のような抜本的な働き方改革の取り組みが求められています。
● 短工期の受発注を回避し、十分な工期を確保する
● 週休2日を徹底する
● 福利厚生の充実や、処遇改善に取り組む
今後は就業する人の視点で「魅力的な職場」と感じられるよう、労働環境を改善することがポイントです。
関連リンク:建設業の2024年問題とは?影響や対策をわかりやすく解説
3. 建設業における人手不足の対策事例
続いて、建設業における人手不足対策の事例を紹介します。
①情報共有やコミュニケーションのデジタル化を促進|有限会社永田鋼管工業
配管製作・取付を行っている、鹿児島県の有限会社永田鋼管工業の事例を見てみましょう。
同社は、建設業向けコミュニケーションツール「Conne」の導入により、社長からの指示待ち体制からの脱却を図りました。
社員同士で工程表などを共有し、社長が直接介入しなくても業務が進むようになったことで、業務スピードが向上し、社員が主体的に動けるようになっています。
その結果、大幅な生産性改善に成功しました。
②会議時間の省略で現場に集中できる環境を実現|株式会社本山建設
総合建設業を営む株式会社本山建設も「Conne」を導入し、進捗状況の共有や、文書の決裁をデジタル化しました。
現場にわざわざ足を運ばなくても、パソコンから確認できる情報量が増えたことで、会議時間を削減し、担当者が現場作業に集中できる環境を実現。協力会社とのスムーズな連携も促進され、業務のスピードと品質が向上しました。
③特例監理技術者の制度をきっかけに、業務効率化を実現|金杉建設株式会社
埼玉県の総合建設会社である金杉建設株式会社は、特例監理技術者の制度を機に「Conne」を導入し、情報共有の方法を見直しました。
「Conne」のアプリ上で、工事ごとに「スペース(情報共有のためのフォルダ)」を作成。現場関係者と協力会社がリアルタイムで情報を共有し、管理職も全現場の情報を把握できる環境を整備しています。
工事関係者は「Conne」にアクセスすれば、必要な情報を確認できるので、メール・書類による報告の手間を削減でき、業務効率化につながった事例です。
まとめ
建設業における人手不足を乗り越えるためには、働き方改革と業務効率化が急務です。
その第一歩として、比較的導入ハードルが低く、社内の誰もが取り扱いやすいITツールの導入がおすすめです。
弊社が提供している施工管理アプリ「Conne」は、現場担当者の負担を軽減し、関係者間の情報共有をスムーズにするコミュニケーションツールです。事例でご紹介した通り、すでにさまざまな建設会社において、業務効率化の目的でご利用いただいています。
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