【2024年】建設業の今後の見通しとは。現状や課題、対策も

いま、建設業界は2024年問題をはじめ、倒産件数の増加や資材高騰、人材不足と高齢化など、さまざまな課題を抱えています。「将来に向けて持続的に事業を継続させていくために、いま企業として最優先で取り組むべきことは何だろうか」と、思案している経営者の方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、建設業界が現状で抱えている課題を詳しく解説するとともに、今後の業界全体の見通し、課題解決に向けて各企業が取り組むべき対策をお伝えします。

1.建設業の現状

はじめに、いま建設業が抱えている4つの課題について詳しく見ていきましょう。

①倒産件数の増加

帝国データバンクが発表した建設業に関する倒産動向調査によると、2023年の倒産件数は1,671件で、前年と比べると38.8%増でした。2000年以降、30%を超える増加率は初めてで、高い水準だったといえます。あわせて、負債総額は約1,856億円と前年比52.5%増になっています。とくに小規模事業者の倒産が多く、後述する資材高騰や2024年問題が原因であると考えられます。
参考:「建設業」倒産動向調査(2023 年)|帝国データバンク

②資材高騰

ウクライナ危機による燃料高騰や円安進行などによって、建設業は主要資材の価格高騰にも悩まされています。2024年2月時点で、全体として以下のように高止まり状態が続いています。

  • 生コンクリート(円/10㎥)…¥197,000 (前年同月比+10.4%)
  • セメント (円/10t)…¥159,000 (前年同月比+23.3%)
  • ストレートアスファルト(円/t)…¥103,500 (前年同月比+6.7%)

参考:最近の建設業を巡る状況について【報告】|国土交通省

③人材不足と高齢化

建設業に就業している人数は、平成9(1997)年の685万人をピークに、その後は減少傾向にあります。また、技能者・技術者の人数も下降している傾向が見られます。

同時に、就業者の高齢化も進行しており、3割が55歳以上、29歳以下は1割という現状があります。今後10年以内にベテラン技能者・技術者が現役を退くことを踏まえると、将来に向けて技術承継をすべき若手層が不足している状況です。

したがって、働き方改革、生産性向上、就業者の処遇改善といった対策を各企業が早急に取り組み、人材確保に努める必要があります。

参考:建設業を巡る現状と課題
関連リンク:建設業の人手不足の現状と原因、対策とは?データを用いて解説

④2024年問題が本格化

現在、建設業の2024年問題が本格化しています。

2024年4月1日の法改正によって、時間外労働の上限規制が設けられました。この変化によって、建設関連企業は次のような新たな課題を抱えることとなりました。

  • 前より残業できなくなった
  • 残業ができないうえに人手不足で、工期策定や人員配置を見直さなくてはならない
  • 賃上げ動向・諸経費高騰のなか、経営状況を改善しなくてはならない

このような、建設関連企業が直面しているさまざまな問題を総称して「建設業の2024年問題」と呼んでいます。

関連リンク:建設業の2024年問題とは?影響や対策をわかりやすく解説

2.建設業の今後の見通し

建設業界全体での今後の見通しは、どうなっていくのでしょうか。ここでは、2つのポイントに着目してご紹介します。

①建設の投資需要は増加

今後、建設の投資需要は増加すると見込まれます。その理由として、以下の3点が建設業界全体に求められているからです。

  • 住宅・ビルの老朽化対策
  • 災害対策
  • 大規模プロジェクトへの対応

1つ目について、建物は年月が経つと老朽化してメンテナンス・再建が欠かせないため、対策が求められています。

2つ目は、日本は地震・台風・洪水などの災害が多く、今後も災害への対策や、被災後の復旧活動に備える取り組みが必要だといえます。

3つ目について、2025年の大阪万博、2027年のリニア新幹線開業など、大規模プロジェクトが発生して需要が拡大すると想定されます。
参考:2025年に開催される 日本国際博覧会(大阪・関西万博)に関連する インフラ整備計画の概要
リニア中央新幹線の整備状況について|国土交通省

②環境に配慮した取り組みの推進

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建設業においても環境に配慮した取り組みが求められています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(CO2、メタンなど)の排出を全体でゼロにする取り組みのことです。政府は「2050年カーボンニュートラル実現」を掲げ、街づくりや家づくり、エネルギー生産・消費など、さまざまな切り口から温室効果ガス削減の取り組みを呼びかけています。

建設生産プロセスにおいても、材料や機械、施工方法などを積極的に改善し、CO2排出量削減を図る取り組みが必要です。

参考:国土交通省のインフラ分野における カーボンニュートラルに向けた取組|国土交通省

3.建設業が今後取り組むべき課題

前述した今後の見通しを踏まえたうえで、建設業が取り組むべき課題について解説します。以下、3つのポイントが挙げられます。

①就業者数の減少と少子高齢化

まずは、人手不足を解消しなくてはなりません。

本記事の前半で述べたとおり、建設需要が増加している一方で、建設就業者の高齢化が進み、若手は少ないという現状です。このまま若手人材を確保できなければ、今後に向けて技術承継ができず、事業の継続が難しくなると懸念されます。

これから建設業に入職する人を確保し、離職することなく長く働いてもらいながら着実にキャリアアップを図れるよう、働く人の処遇を改めて見直す必要があります。

②長時間労働

長時間労働の是正も必要です。

建設業の労働時間は、ほかの産業と比べて長い傾向にあります。国土交通省の資料によると、年間の総実労働時間は全産業と比べて90時間長いことが明らかになっています。約20年前と比較すると、全産業では総労働時間が約90時間減少しているものの、建設業においては約50時間減と、減少幅が少ない点も懸念されます。

今後も長時間労働を改善できなければ、「建設業は業務負荷が高い」といったネガティブなイメージを払拭できず、若者離れがさらに進んでしまう恐れがあります。

参考:建設業を巡る現状と課題|国土交通省

③インボイス制度の導入による一人親方の負担増

2023年10月から「インボイス制度」が導入され、個人事業主として活動する一人親方の税負担が大きくなってしまう課題も挙げられます。

インボイス制度とは、商品・サービスの売り手(一人親方)が、買い手(取引のある建設関連企業)に対して、正確な適用税率や消費税額などを伝える制度です。

一人親方は、課税事業者(消費税の納付義務を負う)になるか、免税事業者(消費税の納付義務を負わない)のままでいるか、自身で選択できます。しかし、売り手側が消費税を国へ納付しなければ、その消費税額は取引先へ転嫁されることがあります。そのため、買い手側の立場を考慮し、「インボイスに対応し、課税事業者になる」という選択をした一人親方も多いかもしれません。すると、一人親方は消費税を納税する必要があり、これまでと比べて手元に残る金額が減ってしまうのです。

また、買い手側である建設関連企業の立場では、経理処理がこれまでよりも煩雑になります。取引のある一人親方のインボイス対応状況を正確に把握しておかなくては、自社の経営に少なからず影響を及ぼすことになるでしょう。

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4.建設業の課題解決に向けた対策


ここからは、建設業の課題解決に向けた対策を具体的に見ていきましょう。

①外国人材の活用

人材不足への対策として、外国人材の活用も有効です。

建設業に従事する特定技能外国人は年々増加しています。特定技能とは、建設業をはじめとする人手不足とされる分野において、就労を可能とする在留資格のことを指します。

特定技能制度には「1号」と「2号」があります。1号の在留期間は通算5年であるのに対し、2号では在留期間の更新に上限がありません。2022年には、建設業において初の2号認定が出ています。

②ICT施工の導入

ICT施工の導入も有効です。ICT施工とは、工事現場で情報通信技術を活用し、作業員の負担を減らして生産性向上を図ることを指します。

ICT施工によって業務効率化が実現すると、人手不足の緩和、長時間労働の是正につながるでしょう。また、ICT建機の導入で稼働時間が減少した場合、その分のCO2排出量も減ると期待されています。

関連リンク:建設業のICT化とは?必要な理由やメリット、課題、事例を解説

③若者と女性の採用

若者と女性の採用・定着に向けて取り組みを強化しましょう。

前述したとおり、建設業で働く若者の割合だけでなく、女性も少ない状況です。今後、新たに採用する人材を定着させるためには、若者や女性が働きやすく、長く働き続けられて、離職率の少ない職場づくりを目指す必要があります。

具体的には次のような、働き方改革関連の施策が推奨されます。

  • 週休2日制の実施
  • 出産・育児休暇取得
  • 教育制度の充実
  • 業務効率化による残業時間の削減

関連リンク:建設業で働く女性が少ない理由とは。割合や取り組み、事例を紹介

④建設キャリアアップシステムの導入

建設キャリアアップシステム(CCUS)を積極的に導入して利用しましょう。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、建設業団体と国交省が官民一体で推進する新たな制度です。技能者の技術・経験を見える化し、業界全体の質の向上が目的です。

たとえば一人親方は、システムへの登録を無料でできて、資格・実績・スキルを可視化できます。保有技能を正当に評価され、より良い仕事の受注につながる可能性が高まります。

関連リンク:建設キャリアアップシステムとは?メリット・デメリットなどを紹介

⑤サプライチェーン全体で建設資材の適切な価格転嫁を実施

建設に必要な主要資材の価格高騰が起こるなか、多くの建設企業は注文者(施主)に対して契約変更協議の申し出を行っているものの、契約変更が行われないケースも見られます。

そこで国土交通省は、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を図るよう、発注者と受注者間で必要な契約変更を実施できる環境を整備しました。

具体的には、以下のような取り組みによって、発注者・受注者としてそれぞれ取るべき行動が明確化されました。

  • 契約締結状況のモニタリング調査を実施
  • 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の提示

受発注者の両方が、資材コスト・労務費上昇を適切に価格へ転嫁できるよう、互いに交渉や契約のあり方を見直す必要があります。
参考:最近の建設業を巡る状況について【報告】|国土交通省

⑥施工管理アプリの活用

業務効率化を進めるために「施工管理アプリ」など、ITツールを積極的に活用しましょう。

施工管理アプリとは、現場関係者が必要な書類、図面、写真、各種資料やデータなどを、アプリ上で一元管理し、パソコンやスマートフォン、タブレットからでも手軽にアクセスできるようにするツールです。

たとえば、資料共有機能を活用して、書類や図面、写真など、外出先からでもアクセスできる状態を整えておくことで、現場と事務所を往復する手間がなくなり、業務効率化が実現するでしょう。

また、チャット機能を搭載した製品もあるので、現場関係者間のコミュニケーション活性化、若手とベテラン間での情報共有促進など、さまざまなメリットを期待できます。

関連リンク:無料版あり|建設現場におすすめの施工管理アプリ17選を徹底比較

5.施工管理アプリを使って建設業の課題解決に取り組んだ事例

ここからは、施工管理アプリを活用して、建設業の課題解決に取り組んだ2つの事例を紹介します。

①若手従業員の教育機会に活用|株式会社植松建設

総合建設業の「株式会社植松建設」は、若手従業員の教育に施工管理アプリを活用しています。

同社には、作業員から現場代理人を目指す若手社員がおり、道路維持管理パトロールの報告に施工管理アプリを活用しています。

「スマホは苦手」と言っていたベテラン社員も、若手からの報告・連絡に積極的に目を通し、若手社員に対してアドバイスをするようになったそうです。会話のきっかけにもなり、新たな教育の機会が生まれた事例です。

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株式会社植松建設様の導入事例はこちらから

②情報共有が促進され生産性向上を実現|金杉建設株式会社

総合建設業「金杉建設株式会社」でも、施工管理アプリを活用した結果、情報共有が促進され、生産性が向上しました。

同社では、公共工事において複数の現場を担当する制度が創設されたことを機に、業務効率化を進めたいと考えていたそうです。

そこで施工管理アプリを導入し、管理職や現場関係者、さらに協力会社も同じデータにアクセスできる環境を整えました。メール・書類での報告と比較して、報告の効率性が上がって質も高まり、生産性向上につながっています。

施工管理アプリを導入し、メール・書類での報告と比較して、報告の効率性が上がって質も高まり、生産性向上につながっています。
金杉建設株式会社様の導入事例はこちらから

6.まとめ

本記事では、いま建設業界が抱えるさまざまな課題と、今後の見通し、実行すべき対策について解説しました。

「課題が多すぎる」「自社ではどこから手をつけるべきか、わからない」とお悩みの経営者様は、まずは「自社で働く人が快適になること」を目指してみませんか?

自社で働く人、現場に関わってくれる協力会社の人など、一人ひとりが「コミュニケーションが取りやすい」「大きな負担を伴わずに、毎日快適に仕事ができる」と感じられるような状況を少しずつ整えてみましょう。

そこで役立つのが、施工管理アプリなどのITツールです。

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